カーボンニュートラルとは?重要性や企業がすべきことをわかりやすく解説

カーボンニュートラルとは?重要性や企業がすべきことをわかりやすく解説

二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラル。気象災害が多発している現在は、世界的に取り組むべきことと言えるでしょう。この記事では、カーボンニュートラルの概要、日本や世界の取り組みについて紹介します。製造業として取り組むべきことについても触れていますので、参考にご覧ください。

本記事でわかること
  1. カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること
  2. カーボンニュートラルの重要性。環境省も言及
  3. カーボンニュートラルに向けた世界各国の目標
  4. カーボンニュートラルに向けた日本政府の主な取り組み
  5. 製造業者がカーボンニュートラルに取り組む必要性やメリットとは
  6. カーボンニュートラルを実現させるために、製造業の企業がすべき5行動
  7. 〈製造業注目〉カーボンニュートラルへの取り組みをサポートする、生産管理システム「ProAxis」
  8. 【用語集】カーボンニュートラルの理解をより深める9用語
  9. カーボンニュートラルを正しく理解し、最大限の取り組みを

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました(詳しくは後述)。

ポイントとなるのは、「全体としてゼロにする」という点です。温室効果ガスの排出量をゼロにすることは不可能なため、温室効果ガスの「排出量」 を削減する取り組みと同時に、排出量から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引く取り組みを進めて、排出量と吸収量の合計を実質的にゼロにするという考えです。

(環境省「カーボンニュートラルとは」を加工して作成)

カーボンニュートラルの重要性。環境省も言及

近年、世界の至るところでさまざまな気象災害がもたらされています。環境省によると、世界の平均気温は2020年時点で、工業化以前(1850〜1900年)と比べ、既に約1.1℃上昇。何か対策を取らなければ、さらに気温が上昇し、その影響は以下のように広範囲に及ぶと予測されています。

  • 深刻な干ばつと水不足
  • 大規模火災
  • 海面上昇
  • 洪水
  • 極地における氷の融解
  • 壊滅的な暴風雨
  • 生物多様性の減少 など

温暖化による気象災害を減らすために、今、取り組むことが大切です。環境省も「将来の世代も安心して暮らせる、持続可能な経済社会をつくるため、今から、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて、取り組む必要があります。」と謳っています。

(出典:環境省「カーボンニュートラルとは」)

カーボンニュートラルに向けた世界各国の目標

2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目標に掲げるのは、日本だけではありません。地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています
この目標を達成するために、各国はパリ協定(詳しくは後述)にて2030年の目標を定めており、主な国の目標は以下の通りです。

【各国の2030年目標】

国名 温室効果ガスの削減目標
日本 −46%(2013年度比)(さらに50%の高みに向け、挑戦を続けていく)
カナダ −40 〜 −45%(2005年比)
フランス・ドイツ・イタリア・EU −55%以上(1990年比)
英国 −68%以上(1990年比)
米国 −50 〜 −52%(2005年比)
(外務省「日本の排出削減目標」 を加工して作成)

カーボンニュートラルに向けた日本政府の主な取り組み

カーボンニュートラルに向けて、日本はどのような取り組みをしているのでしょうか。主な取り組みを紹介します。

(以下、経済産業省「第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組」「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」、環境省「地域脱炭素とは」を加工して作成)

2050年カーボンニュートラル宣言

2020年10月26日、菅内閣総理大臣が所信表明演説において、日本が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。加えて2021年4月には、地球温暖化対策推進本部及び米国主催の気候サミットにおいて、「2050年目標と整合的で、野心的な目標として、2030年度に、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに50%の高みに向けて、挑戦を続けていく」と表明しています。

地域脱炭素ロードマップ

2050年カーボンニュートラルの目標達成のためには国と地方の協働・共創による取り組みが必要不可欠です。地域脱炭素の実現を目指し、特に2030年までに集中して行う取り組み・施策を中心に、工程と具体策を示したのが地域脱炭素ロードマップです。

意欲と実現可能性が高いところからその他の地域に広がっていく「実行の脱炭素ドミノ」を目指し、2025年までに全国100カ所以上の脱炭素先行地域において、重点施策を実施し、全国へドミノのように広がることを目指しています。

グリーン成長戦略

2050年カーボンニュートラルの実現に向けての課題を解消すべく、経済産業省が中心となり、関係省庁と連携して策定したのが、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略です。「経済と環境の好循環」をつくっていく産業政策をグリーン成長戦略とし、産業政策・エネルギー政策の両面から、成長が期待される以下の14の重要分野について積極的に取り組むとしています。

産業 成長が期待される重要分野
エネルギー関連産業 1.洋上風力・太陽光・地熱
2.水素・燃料アンモニア
3.次世代熱エネルギー
4.原子力
輸送・製造関連産業 5.自動車・蓄電池
6.半導体・情報通信
7.船舶
8.物流・人流・土木インフラ
9.食料・農林水産業
10.航空機
11.カーボンリサイクル・マテリアル
家庭・オフィス関連産業 12.住宅・建築物・次世代電力マネジメント
13.資源循環関連
14.ライフスタイル関連

製造業者がカーボンニュートラルに取り組む必要性やメリットとは

カーボンニュートラルに対しては、業種に関係なく社会全体として取り組むべきことですが、製造業者は特に積極的に取り組むべき業種の一つと言えます。その理由を必要性やメリットという観点からみてみましょう。

【必要性1】温室効果ガスの排出が多い

温室効果ガスの一つである「二酸化炭素」の排出量をクローズアップすると、2021年度の日本の排出量は10億6,400万トンでした。排出を部門別でみると、製造業を含む産業部門が35.1%とトップに。産業部門の排出量の変化をみると、2013年度比は−19.5%でしたが、前年度比は5.4%増加しています。カーボンニュートラルに向け、業界全体で削減に取り組むべきと言えます。

(環境省 脱炭素社会移行推進室、国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス「2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要」を加工して作成)

【必要性2】サプライチェーン排出量が多い

サプライチェーン排出量とは、自社内における直接的な排出だけでなく、自社事業に伴う間接的な排出も対象とし、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量のことです。

具体的には、「サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量」で表し、各Scopeは以下が該当します。

Scope1:自社による温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)。15のカテゴリに分類される

製造業の活動は、Scope1からScope3まで全てのScopeに当てはまるため、サプライチェーン排出量はどうしても多くなりがちです。製造業者は、どのScopeでも排出量削減が求められます。

(環境省「サプライチェーン排出量 概要資料」を加工して作成)

【メリット1】生産性の向上

カーボンニュートラルへ向けた取り組みを進めるためには、エネルギー消費を抑えるために現時点で改善できる工程がないか、製造工程を見直すことから始まります。無駄な工程や改善できることを洗い出して適切な対策を講じられれば、生産工程の効率化を生み、生産性の向上につながります。

【メリット2】技術の向上

温室効果ガスの排出を抑えるためには、新しい技術を開拓する必要もあります。産業部門における二酸化炭素を抜本的に削減する技術確立に向けた取り組みの例として、電機・電子業界では、次世代の省エネ・脱炭素化技術の革新(スマートグリッド、水電解水素製造、パワー半導体、急速充電・ワイヤレス充電など)を進める動きがあります。他の業界でも、新製品や新技術の開発に取り組んでいます。技術を向上させることは、新たなサービスや付加価値を生み出し、事業存続や競争力の強化を図ることにつながるでしょう。

(一般社団法人 経済広報センター「カーボンニュートラルの実現には、どのようなイノベーションが必要か」を加工して作成)

【メリット3】コスト削減

温室効果ガスを削減するための施策の一つとして省エネルギー化を進めなければなりませんが、省エネ化はコスト削減につながります。省エネに対応した設備を取り入れたり、再生可能エネルギーを導入したりすることは、初期投資はかかったとしても、長い目でみればコスト削減につながると言えるでしょう。

【メリット4】企業価値・ブランドイメージの向上

世界的な課題であるカーボンニュートラルを意識した企業活動は、環境や世界情勢に配慮している企業としてのアピールにもなります。SDGsに取り組む企業に対する評価が高くなっているように、カーボンニュートラルへの積極的な取り組みも評価が高くなる一因となるでしょう。実際に、投資家の間では「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」に配慮した経営を行う企業に対して優先的に投資を行う「ESG投資」が世界的にトレンドとなっています。企業価値・ブランドイメージの向上は、新しい取引先の開拓や採用活動にも好影響を及ぼすと考えられます。

カーボンニュートラルを実現させるために、製造業の企業がすべき5行動

製造業の企業がカーボンニュートラルを目指して取るべき行動について、これまでさまざまな製造業者のシステム構築をお手伝いしているキッセイコムテックが解説します。

ビジネスソリューション事業部
第2営業部 エキスパート

中尾 太郎

2016年入社。20年に渡り、製造業を主要な顧客とし、生産管理パッケージの導入営業を担当しています。幅広いお客様に対応し、多くの経験を積み、製造業における深い専門知識を獲得しました。お客様からの信頼は非常に厚く、それは長いお付き合いと卓越したサービスの証です。
また、自社パッケージの製品戦略やマーケティングにも深く関与し、会社の成功に貢献しています。製品の方向性を見極め、市場の変化に柔軟に対応することで、競争力を維持しています。
今後もお客様と協力し、最適なソリューションを提供し続けます。

【行動1】省エネルギーの推進

まずは使うエネルギーを減らしましょう。例えば製造業なら生産設備の使用電力の抑制にはじまり、作業工程を見直し無駄を省くことも省エネルギーにつながります。生産管理システムを導入し、生産性を上げるといった根本的な見直しも大きな一歩となります。

【行動2】再生可能エネルギーへの切り替え

オフィスや工場で使用するエネルギーを、従来のものから風力、太陽光、地熱、水力、バイオマスなど再生可能エネルギーへ切り替えることも企業ができる行動です。再生可能エネルギーは化石燃料のように輸入に依存せず国内で生産できるので、エネルギー自給率の向上にもつながります。

【行動3】サプライチェーン排出量の削減

前述したように、製造業はサプライチェーン排出量が多い業種です。ただし、企業によってScopeごとの排出量の割合は異なります。自社のサプライチェーン排出量の中で、どのScopeのどのカテゴリが多いのか特定し、排出割合の高いカテゴリから削減対策を実施してみるのも一案です。

(環境省「サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて」を加工して作成)

【行動4】3R(リデュース、リユース、リサイクル)の徹底

環境と経済が両立した循環型社会を形成していくための取り組みである3R(リデュース、リユース、リサイクル)は、製造業者においても徹底すべきことです。例えば、リサイクル原料を使う、回収した製品から使える部品を取り出し再利用する、長期にわたり使用できる設計を行うなど、企業によって取り組めることがあるはずです。

【行動5】DXの推進

企業のDX(Digital Transformation)を推進することも大事です。DXは、競争上の優位性へとつなげることを目的の一つとし、デジタルやITの技術、蓄積されたデータを活用して、既存のビジネスやプロセスに革新的な変化をもたらします。その結果、企業の生産性・利益をアップさせますが、その背景には業務の効率化があり、カーボンニュートラルに貢献していると言えます。

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〈製造業注目〉カーボンニュートラルへの取り組みをサポートする、生産管理システム「ProAxis」

製造業におけるさまざまな課題を解決できる生産管理システムは、カーボンニュートラルへの取り組みを推進するためにも導入を進めたいシステムです。ここでは、キッセイコムテックが開発・販売している生産管理システム「ProAxis(プロアクシス)」をご紹介します。

ProAxis」は現場ニーズを重視した、「適応性」「操作性」「柔軟性」を兼ね備えた、キッセイコムテックのオリジナル製品です。システムには、カーボンニュートラルへの取り組みをサポートする機能を搭載しています。

ProAxis」では、製品の原材料や配送ルートから、生産設備内で排出した温室効果ガス、製品の使用や廃棄にかかる温室効果ガスを、Scopeごとにデータベース化。排出量を登録・集計することで製品に関わる温室効果ガスの種類とその排出量を求めることができます。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの製品別排出量比較が可能となるため、カーボンニュートラルに向けた取り組みを数値で評価できます。

ProAxis」の導入にあたっては、「安心のOne Stop Service」体制を整えており、要件定義から本稼働まできちんと導く品質・進捗管理を徹底しています。本稼働後もお客様ごとに専用の保守問合せ窓口を用意し、万全なサポート体制を整えていますので、安心してお使いいただけます。

「量産」にも「個別受注」にも対応できる生産管理・債権債務管理システム「ProAxis」

【用語集】カーボンニュートラルの理解をより深める9用語

カーボンニュートラルをより正しく理解するために押さえておきたい用語について、紹介します。

(以下、環境省「温室効果ガスインベントリの概要」「トピックス」「J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて」「ゼロエミッション」「気候変動の国際交渉|関連資料」、経済産業省 資源エネルギー庁「再生エネルギーとは」を加工して作成)

1|温室効果ガス

温室効果ガスとは、大気中に含まれる二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素(N2O)、フロンガスなどの総称です。温室効果ガスは大気中の熱(赤外線)を吸収する性質を持つため温室効果が強くなり、地表付近の気温が上がり、地球温暖化につながります。

2|脱炭素社会

脱炭素とは、温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを指します。その脱炭素を実現した社会のことを脱炭素社会と言います。2021年5月26日に成立した「地球温暖化対策推進法の一部改正法」では、ポイントの一つに「2050年までの脱炭素社会の実現を基本理念に」としています。

3|低炭素社会

低炭素とは、二酸化炭素の排出量を少なく抑えることを指し、低炭素を実現した社会のことを、低炭素社会と言います。

4|再生可能エネルギー

再生可能エネルギーとは、温室効果ガスを排出しないエネルギーのことです。政令において、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスが、再生可能エネルギーと定められています。

5|カーボン・オフセット

カーボン・オフセットとは、排出されてしまう温室効果ガスを埋め合わせるという考え方です。温室効果ガスの排出についてまずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行った上で、事業活動を通じてどうしても排出してしまう温室効果ガスについては、その排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資するなどの取り組みを通じ、排出量の埋め合わせを行います。

6|カーボンネガティブ

カーボンネガティブとは、温室効果ガスの排出量よりも吸収・除去された量の方が多い状態を指します。つまり、全体でみたときに、排出量の方がマイナスになっている状態です。

7|ゼロエミッション

ゼロエミッションとは、廃棄物の排出(エミッション)をゼロにするという考え方です。1994年に国連大学が提唱しました。産業における工程を再編成し、廃棄物の発生を抑えた新たな循環型産業システムを構築することを目指しています。

8|COP3「京都議定書」

京都議定書とは、1997年に京都市で開かれたCOP3で採択された国際約束です。先進国の温室効果ガス排出量を1990年比で5%以上削減することを目標としました。第一約束期間(2008〜2012年)において、日本は6%削減の目標を達成しています。一方、二酸化炭素排出量の多い開発途上国においては数値目標が義務化されておらず、世界的な混乱を招く一因にもなったと言われています。

COP(コップ)とは
COPとは、締約国会議(Conference of the Parties)の略で、多くの国際条約で加盟国の最高決定機関として設置されています。気候変動に関する問題については、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のCOPが毎年開催されています。

9|COP21「パリ協定」

パリ協定とは、2015年のCOP21で採択された2020年以降の温室効果ガス排出削減のための新たな国際的な枠組みです。世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より低く、1.5度に抑えるよう、各締約国は2030年までに自国の温室効果ガス排出量を削減する目標を設定し、それに基づいて具体的な行動を取ることが求められています。気候変動に対する国際的な取り組みの新たな基盤とされています。

カーボンニュートラルを正しく理解し、最大限の取り組みを

これからはカーボンニュートラル抜きに企業活動をすることは考えられない社会となっていくことでしょう。政府をはじめ、各地域でもカーボンニュートラルを推進している今こそ、カーボンニュートラルについて正しく理解し、それぞれの企業でできる最大限の取り組みをすることが欠かせません。生産管理システムを導入するなどDX化を進めながら、カーボンニュートラル実現を目指しましょう。

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