製造業のIoT化でコスト削減&生産性向上!5つの課題と解決策も解説

製造業の現場では、人手不足やムダの削減、生産性向上が急務です。その解決策の一つが IoT(モノのインターネット)ですが、「導入のハードルが高い」「費用対効果が見えにくい」と感じていませんか?
実は、IoT導入は スモールスタートが基本です。小さく始め、確実に成果を出すことで、段階的に拡大できます。たとえば、既存設備に後付けできるIoTセンサーを使い、設備の稼働率を向上させる方法もあります。
本記事では、 IoTでコスト削減&生産性向上を実現する具体的なアクションを紹介します。よくある5つの課題と、その解決策も解説しますので、現場改善に活かしてください。
製造業におけるIoTとは?
製造業における IoT(アイオーティー) とは、工場の設備や機械をインターネットに接続し、稼働状況や生産数をリアルタイムで可視化する技術です。
たとえば、既存の工作機械にIoTセンサーを取り付けることで、稼働率や温度、振動データを収集し、異常が発生する前にメンテナンスを実施できます。「機械が壊れてから修理する」のではなく、「壊れる前に対処する」ことで、ダウンタイムを削減できるのが大きなメリットです。
また、データを分析・活用することで、生産効率の向上やコスト削減につなげることも可能です。たとえば、生産ラインのボトルネックを特定し、無駄な待ち時間を削減すれば、生産量を増やせます。
本章のまとめ
このように、IoTは単なる「データの見える化」にとどまらず、実際に現場の改善につながるツールなのです。
製造業でIoTが注目される理由

製造業における IoT化は、単なる技術トレンドではなく、人手不足の解消や生産性向上に直結する実用的な手段として注目されています。
ここでは、なぜ製造業でIoTが重要視されているのか、その背景を解説します。
「インダストリー4.0」による世界的な流れ
製造業でIoTが注目されるきっかけとなったのは、ドイツ政府が2011年に発表した「インダストリー4.0」 です。これは、「第4次産業革命」とも呼ばれ、工場のデジタル化・自動化を国家戦略として推進するプロジェクト でした。
参考:総務省「インダストリー4.0とは」
この動きにより、製造プロセスのデータ化・最適化が進み、IoTを活用した「スマートファクトリー」の概念が世界中に広がりました。日本でも、この流れを受けて、IoTによる生産革新を推進する企業が増えています。
人手不足・非効率な作業の解決策になる
IoTが注目される最大の理由は、現場の人手不足やムダな作業を削減できるからです。
例えば、工場の機械にIoTセンサーを設置し、稼働状況を遠隔で監視できるようにすると、次のようなメリットがあります。
- 現場に行かなくても機械の状態を確認できる → 24時間稼働する設備を、自宅や別拠点のPCからリアルタイムで監視
- 異常が発生する前にメンテナンスできる → 故障の予兆を検知し、突発的なダウンタイムを防ぐ
- 遠隔操作で対応できる → 工場に行かなくても、エラー復旧や設定変更が可能
実際に、これらの取り組みによって人手不足の現場でも安定した生産が可能になった企業も増えています。IoT化は単なるデータ収集ではなく、「業務のムダをなくし、生産効率を高める手段」として、多くの企業にとって実用的な選択肢になっているのです。
製造業でIoT化するメリット5選
ここまで、製造業でIoTが注目される背景を解説しました。では、実際にIoTを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか?
自社の状況と照らし合わせながら、取り入れられるものがないかチェックしてみてください。
1. 生産ラインのボトルネックを可視化し、業務効率を改善
製造業にIoTを導入すると、機械の稼働状況や生産ラインの各工程がリアルタイムで可視化できます。これにより、「どこでムダが発生しているのか」 が明確になり、業務の改善が可能です。
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活用例:IoTセンサーを取り付け、稼働率が低い設備を特定
⇒ ボトルネックを見つけ、生産工程を最適化 することで、無駄な待ち時間を削減
また、温度・湿度・エネルギー消費量などを一括管理 することで、適切な運用が可能になり、エネルギーコスト削減にもつながります。
出典:経済産業省 第3節 ものづくり人材に係るデジタル技術の活用の状況(2022年)
実際に経済産業省の調べによると、デジタル技術によって効果が出た項目で55.6%と一番多かったのが「生産性の向上」でした。
データを見える化して管理することで生産性を高められる点は、IoT化の大きなメリットと言えます。
2.設備の異常をリアルタイムで検知し、ダウンタイムを削減
通常、機械の故障が発生すると、
- 作業員が異常箇所を探すのに時間がかかる
- 生産ラインが一時停止し、納期遅延につながる
という問題が発生します。
しかし、IoTを導入すれば、異常を即座に検知し、スマートフォンやタブレットへ通知 できるため、迅速な対応が可能になります。
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活用例:IoTセンサーで異常振動を検知し、機械が故障する前にメンテナンス
⇒ ダウンタイムを最小限に抑え、計画的な保守管理が可能
結果、IoT化によって品質の良い製品を効率的に作り続けられるのです。
3. 熟練技術をデータ化し、自動化・標準化を実現
製造現場では、ベテラン技術者の 「経験と勘」 に頼る作業が多く、技術継承が大きな課題になっています。特に、
- 焼き入れ工程の温度調整
- 刃物交換のタイミング判断
- 仕上がり品質の目視検査
などは、属人化しやすい業務の代表例です。
そこでIoTを活用することで熟練技術をデータ化・標準化 できるため、若手でも同じ品質で作業を再現可能 になるのです。
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活用例:AIとIoTを組み合わせ、過去のデータを分析して最適な加工条件を自動設定
⇒ 品質のバラつきをなくし、安定した製品を生産
このように、IoTでデータを収集し、AIを活用することで熟練工の技術を継承しながら自動化を進められます。結果的に、人手不足の現場でも安定した生産性を維持できるのです。
4.工場内の監視・管理を効率化し、業務負担を軽減
これまで、工場内の温度管理や設備点検は 人の手による目視確認 が一般的でした。
IoTを導入することで、
- 設備の状態を リモートで監視 し、異常があれば即通知
- 点検作業の自動化 により、人員をより重要な業務に割り当て可能
といったメリットが生まれます。
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活用例:IoTセンサーを活用し、空調や電力の最適化を自動化
⇒ 無駄な業務を削減し、省人化を実現
削減できた時間は、新たな価値を生み出すための作業にも使えるでしょう。
5.IoTによる品質管理の強化で、不良品を削減
製造業において、品質の安定は非常に重要ですが、以下のような課題から、不良品が発生するケースも少なくありません。
- 目視検査の限界
- 環境要因(温度・湿度)の変化に気づきにくい
そこで、IoTを活用すると、トレーサビリティ(生産履歴の記録)を強化し、品質の一貫性を確保することが可能になります。
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活用例:IoTセンサーで温度変化を記録し、異常時に自動調整
⇒ 環境要因による品質のバラつきを削減
さらに、蓄積したデータをAIで分析することで、異常の発生傾向を予測し、故障や品質低下を未然に防ぐことができます。例えば不良品の増加原因が「一定の温度変化が起きたとき」であれば、機械の温度設定を調整することで改善が可能です。
本章のまとめ
IoTは、生産性向上・コスト削減・品質改善 に大きな効果をもたらします。
しかし、「いきなりすべての工場をIoT化する」のは現実的ではありません。まずは、以下のようなスモールスタートから始めるのがおすすめです。
- 稼働データの可視化:後付けIoTセンサーを活用し、ボトルネックを特定
- 異常検知の導入:機械の振動・温度・電流値をモニタリングし、故障リスクを低減
- 特定工程の自動化:AIと連携し、最適な加工条件を自動調整
スモールスタートで成果を出し、徐々に範囲を拡大することで、着実にIoTの効果を実感 できます。ぜひ、「まずは1つの工程からIoTを導入する」 ことを目標に、取り組んでみてください。
製造業にIoTを導入する際の5つの課題と解決策
IoT導入には多くのメリットがありますが、一方で乗り越えるべき課題もあります。ここでは、IoT化を進める際の代表的な5つの課題とその解決策を紹介します。
1.IoTに詳しい人材の確保が難しい → 小規模なデジタル化から始める
IoTを導入するには、ITやデータ活用の知識が不可欠です。
しかし、多くの製造業ではIoTに詳しい人材が不足しており、新たに専門人材を採用するのも容易ではありません。また、社内で育成しようとしても、「何から始めればいいのかわからない」といった問題に直面することが多いでしょう。
そこで、いきなりIoTを導入するのではなく、まずは現場の一部をデジタル化して実践的に学ぶのが効果的です。
具体的な方法
- 現場で頻繁に使う帳票や点検表を電子化し、タブレットで記入・管理
- ホワイトボードでの生産管理をExcelやGoogleスプレッドシートに置き換え、データを可視化
- 作業指示書や日報を紙からデジタルに移行し、現場でのデータ入力を習慣化
例えば、「まずは紙の点検表をスマホで入力する」だけでも、現場の負担を増やさずにデジタル化を進められます。小さな変化を積み重ねることで、従業員のITリテラシーを高め、無理なくIoT導入の土台を作ることができます。
2.IoTの知識を広めることが困難 → 「現場の経験者」をデジタルリーダーに
IoT導入において、「新しいシステムをどう社内に広めるか」という課題は避けて通れません。特に、デジタルに不慣れな現場では、「難しそう」「面倒そう」といった抵抗が生まれがちです。
このような場合、現場の中で比較的デジタルに詳しい人をリーダーにし、少人数のチームで導入を進めることが効果的です。
具体的な進め方
- まずは一部のベテラン社員やリーダー層にデジタルツールを試してもらう
- 「使えそう」と感じたツールを、現場の他のメンバーにも広げる
- 一斉教育ではなく、段階的に「できる人」を増やしていく
最初に現場リーダーが「タブレット端末で設備の稼働データを記録する」といった小規模な取り組みから始めると、従業員の負担を抑えながら導入を進めることができます。
3.IoTやITのノウハウが不足 → ITベンダーや導入支援企業と協力する
IoT導入における大きな課題の一つが、「ノウハウ不足」です。実際に、経済産業省の調査でも、多くの企業が「何をどう進めればよいかわからない」と感じていることが明らかになっています。
出典:経済産業省 第3節 ものづくり人材に係るデジタル技術の活用の状況(2022年)
このような場合、外部のITベンダーや導入支援企業のサポートを受けるのが有効です。特に、製造業に特化したベンダーであれば、現場の業務に即したアドバイスを受けられます。
具体的な活用方法
- 無料トライアルのあるツールを試しながら、現場で実践的に学ぶ
- IoT導入支援企業と連携し、実際の業務を見てもらいながら進める
- 「ソフトを売るだけ」でなく、「活用まで支援してくれる企業」を選ぶ
特に、「導入後の運用支援」まで対応してくれる企業を選ぶことで、現場での活用をスムーズに進められます。
4.セキュリティリスクの懸念 → 信頼できる外部企業と連携し、対策を強化
IoT機器はインターネットを介してデータを送受信するため、適切なセキュリティ対策を講じないと、情報漏洩や設備の不正制御といったリスクに直面する可能性があります。
このリスクを回避するには、基本的なセキュリティ対策を徹底するとともに、信頼できる外部企業と連携することが重要です。
具体的な対策
- IoT機器のパスワードをデフォルトのまま使わず、定期的に変更
- ソフトウェアのアップデートを適切に行い、脆弱性を修正
- セキュリティ専門企業と契約し、リスク診断や監視を実施
出典:経済産業省 IoT 機器を開発する中小企業向け 製品セキュリティ対策ガイド
経済産業省でも推奨されているように、セキュリティは後回しにせず、導入計画の初期段階から検討することが重要です。
5.IoTの導入コストが高い→低コストで導入できるITツールから始める
IoT導入には、センサーの設置やシステム開発など、多くの費用がかかるため、「コストがネックで進められない」という企業も少なくありません。
このような場合、いきなり大規模なIoT化を目指すのではなく、まずは低コストで導入できるデジタル化から始めることが重要です。
具体的な進め方
- まずは煩雑な帳票業務を電子化し、紙のコストや業務負担を削減
- 既存設備を活かしつつ、後付けのセンサーでデータを取得
- クラウド型のIoTツールを活用し、初期投資を抑える
例えば、「現場で使用する紙の帳票をデジタル化し、タブレットやスマホで記入・管理できるようにする」だけでも、大きな効果を得られます。小さな改善を積み重ねながら、コストを抑えて段階的にIoT化を進めましょう。
本章のまとめ
製造業におけるIoT導入にはさまざまな課題がありますが、スモールスタートで進めることで、リスクを抑えながら効果的に導入を進められます。
「まずはできることから始める」ことが、IoT成功の鍵となります。
製造業でIoTを導入した企業の成功事例
この章では、IoTを導入した企業の事例を経済産業省の資料「製造業DX取組事例集」からご紹介していきます。在庫管理の最適化や生産ラインの自動化を図りたい企業の担当者様は、ぜひ参考にしてください。
IoT活用で生産計画の最適化・ロス削減(ダイキン工業株式会社)
ダイキン工業株式会社は、激しい環境の変化に対応し、製造コストの低価格化と製品の差別化を図りながら多様なニーズに応えるために、IoTを導入しました。
IoTを導入するべく新たな工場を設立し、
- 製造現場データの発掘
- データの収集と統合
- データの見える化と分析
- 顧客への価値提供
のサイクルを回すことを構想。
工場内すべての設備にネットワークを接続させ、「データの見える化と分析」に焦点を当てて「工場IoTプラットフォーム」を整備しました。
結果的に生産データを可視化して分析ができたことで、生産計画を最適化し、製品のロスを削減できたという事例です。
ダイキンのIoT導入事例のポイント
・「データの収集と統合」に焦点を当てて目的を明確化
・「工場IoTプロジェクトセンター」を設置し、データに基づいた議論や判断を実施
ダイキンの導入事例から学べることは、目的を明確にすることがIoT導入の鍵になるという点です。IoT化を小さく始めるとしても、工場のどのような課題を解決したいかは明確にしておきましょう。
設備IoTで稼働率向上&コスト削減(トヨタ自動車株式会社)
トヨタ自動車株式会社は、技術開発や生産準備の領域でデジタル化を進めてきたものの、「製造・顧客データのタイムリーなフィードバックを行えない」という課題がありました。この課題を解決するために、現場の声を取り入れながら工場のIoT化を計画します。
- 段階的にIoTを導入することで、デジタル化に慣れない従業員の育成を図りつつ、安全に「工場IoT」のプラットフォームを整備
- 各事業部・工場にてIoTを導入し、現場プロジェクトを立ち上げる
結果的に、導入時のコストを上回る効果(生産性や品質を向上)を生み出しました。
トヨタのIoT導入事例のポイント
・スモールスタートでリスクを抑えながらIoT化を推進
・IoTデータのリアルタイム活用により設備稼働率を向上
・従業員教育と並行して進めたことで、スムーズな定着を実現
特に、各工場・事業部ごとに現場プロジェクトを立ち上げてIoT導入を進めたことが成功の鍵となりました。デジタル化に慣れていない従業員の教育と並行して進め、スムーズなIoT導入とデータ活用を実現したのです。
トヨタの例から学べるIoT化のポイントは、スモールスタートで導入していった点です。帳票電子化などの小規模なIoT導入から始め、データ活用を段階的に広げるのが成功のカギとなります。
製造業のIoT化は帳票業務のデジタル化から始めましょう
製造業におけるIoT化を成功させるためには、いきなり大規模なシステムを導入するのではなく、まずは身近な業務からデジタル化を進めることが重要です。
その第一歩として、紙で運用している帳票業務の電子化に取り組むことをおすすめします。
帳票電子化のメリット
- 業務効率の向上:紙の管理や整理にかかる時間を削減。入力や検索もかんたんに。
- ヒューマンエラーの削減:デジタル入力なので、記入ミスや転記ミスを防止。
- データ活用の基盤構築:蓄積したデータを分析し、現場のカイゼンに活用。
スモールスタートで現場に浸透させる
- 日報
- 点検表
- 作業記録
などの帳票を電子化してみましょう。
小規模なデジタル化から始めることで、現場に負担をかけずスムーズに変革を進められます。
「eXsiteDesigner」で簡単に帳票をデジタル化
キッセイコムテックでは、Excel帳票をそのままアプリ化できる製造業向け現場帳票システム「eXsiteDesigner(エキサイトデザイナー)」を提供しています。
- Excelデータを活用し、そのまま電子帳票化
- 専任アドバイザーが導入・運用をサポート
- ITツールが初めての企業でも安心して導入可能
さらに、センサーやPLCとの連携機能を追加すれば、IoT化に向けたデータ自動収集も可能になります。新たなシステム導入の手間やコストを抑えつつ、スムーズにIoT環境を整えられるのが特徴です。
まとめ
IoT(アイオーティー)とは、さまざまなモノをインターネットにつなげる技術のことです。
製造業におけるIoT導入は、生産性向上や人手不足の解消、コスト削減に大きく貢献します。しかし、いきなり大規模なIoT化を目指すのではなく、スモールスタートが重要です。
例えば手作業で行っている帳票の電子化は、業務の効率化やヒューマンエラーの削減につながり、IoT化の第一歩としておすすめ。
キッセイコムテックの 「eXsiteDesigner(エキサイトデザイナー)」 は、Excelをそのままアプリ化できる製造業向けの現場帳票システムです。手書きミスの防止や、データの蓄積・グラフ化機能を備え、工場全体のIoT化への準備を支援します。
まずは、現在の帳票管理で課題となっている点や、時間のかかる業務を洗い出してみましょう。帳票の電子化についてのご相談は、以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。
