在庫管理の「見える化」を進めるには。メリットや方法、システム選びのポイント

在庫管理の「見える化」を進めるには。メリットや方法、システム選びのポイント

自社で保管している在庫の数量・状態を適切に管理することを「在庫管理」といいます。不要コストや機会損失を防ぐなど、利益に影響するため、正確な在庫管理は重要な業務です。

この在庫管理業務をする上で欠かせないのが、在庫管理の「見える化」です。見える化とは、何を・どこに・どのくらいといった在庫の状況をデータ化し、その場に居なくても分かるように管理する方法を指します。この記事では、在庫管理の見える化の概要からメリット、方法をご紹介します。在庫管理の見える化に取り組みたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

在庫管理の「見える化」とは?

在庫管理の見える化とは、保管場所、商品の種類、数量などの在庫の状況を、誰が見ても分かるように管理することです。見える化は、適正在庫の維持や業務効率化につながるため、在庫管理業務において重要な要素となります。

在庫管理の見える化を進めるためには「現品」の見える化だけでなく、在庫をデータ化することで「在庫情報」として可視化するのが効果的です。それぞれの方法は、後ほど詳しく解説します。

在庫管理を見える化する必要性

在庫管理を見える化する目的として、以下の3つが挙げられます。

  • 部品・原材料の在庫量の把握
  • 課題点の可視化
  • 合理的評価

製造業では、完成品以外に部品・原材料や仕掛品も在庫と考え、これらは企業の資産となります。在庫量が適正でないと、「生産性の低下」や「販売機会の損失」を招く恐れもあるでしょう。

また、見える化を進めていくと、それまで表面化していなかった課題が見えてきます。例えば、「売り上げに貢献しない在庫が多い」「使用数に対し発注数が多い」など、利益向上のボトルネックとなっていた点を可視化し改善策の立案が可能です。

さらに、在庫状況をデータとして可視化することで、在庫量の推移が一目瞭然になります。課題に対する改善策の進行具合や今後の方針決定にも役立てることができるでしょう。

在庫管理を見える化する5つのメリット

在庫管理を見える化することで期待される効果を5つご紹介します。

業務効率が改善する

在庫管理の見える化によって、「在庫確認の手間が省ける」「発注業務が短縮できる」効果が期待でき、業務効率の改善につながります。

また、在庫管理が複雑化すると、全員が在庫状況を把握することが難しくなるでしょう。在庫管理を見える化して、「誰でも」「ひと目で」確認できる状態にすることで、在庫管理業務の属人化を防ぐこともできます。

在庫切れや過剰在庫を防ぎやすくなる

在庫切れや過剰在庫の防止にも、見える化が有効です。在庫切れが起こると、販売機会の損失や、それによる顧客満足度の低下につながりかねません。反対に過剰在庫では、長期保管による品質の低下や、使われずに処分されることによるコスト増大に影響する可能性があります。在庫状況を見える化することで、適正な在庫量の管理が可能になります。

保管スペースを最適化できる

見える化によって在庫管理の適正化が進むと、保管スペースを無駄なく使用できます。これまでより規模を縮小することもできるかもしれません。保管スペースが縮小できれば、管理がしやすくなるほか、管理コストの削減にもつながります。

商品の品質を保ちやすくなる

在庫管理の見える化には、商品の品質保持にも関与します。使用されずに長期間保管されていた在庫は、品質の劣化が進んでいる恐れがあります。見える化の実行によって、古いものから順番に使用し、一定の品質の商品を出荷する仕組みを作ることが可能です。

在庫データを今後の企業経営に活かせる

見える化された在庫データを、企業経営の判断材料として活用することも可能です。見える化の仕組みにより、現時点の状況だけでなく在庫の推移も把握できるようになり、「適切な生産・発注ができているか」「製品の特性に応じた在庫管理ができているか」など、客観的な評価ができます。こうした在庫データを分析することで、需要の予測ができ、企業経営の方向性や戦略を立てやすくなるでしょう。

在庫状況を見える化するための3つの方法

在庫管理の見える化に取り組むには、以下のような方法が挙げられます。

  • 現品の見える化:「ロケーション管理や5Sの徹底
  • 情報の見える化:「エクセルなどによる在庫管理表」「在庫管理システムの導入

それぞれ詳しく見ていきましょう。

現品の見える化|ロケーション管理・5S

在庫状況を見える化する一般的な方法として、「倉庫のロケーション管理」があります。ロケーション管理とは、倉庫内の保管場所に住所を振り分けて在庫を管理する方法です。管理方法は、次の3つがあります。

  • 在庫を固定位置に置く「固定ロケーション」
  • 状況に応じて移動させる「フリーロケーション」
  • 2つを組み合わせた「ダブルトランザクション」

また、見える化には5Sの徹底も重要です。5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字をとった言葉で、「どこに何がいくつあるか」が把握しやすくなり、取り違えの防止や探す手間の簡略化になります。片付けの方法や在庫置き場の保管ルールを決め、従業員一人ひとりが心がけて取り組む必要があります。

ロケーション管理や5Sは、工場などの現場で在庫状況を可視化する効率的な方法であり、業務効率の向上につながるでしょう。しかし、管理するべき在庫の量や数が増えると、管理が行き渡らなくなることが想定されます。そのため、次に挙げるような、在庫情報の見える化を進めることが重要です。

情報の見える化|在庫管理表の活用

在庫情報を見える化する方法の一つとして、エクセルなどを活用した在庫管理表の作成が挙げられます。在庫管理表とは、在庫数や状態、日時の把握ができる表を指します。作成時に記録する情報として、以下に挙げた基本的な項目に加え、自社に合わせてアレンジしていくといいでしょう。

  • 商品コード、商品名
  • 入庫出庫の日付
  • 入庫数、出庫数、在庫数
  • 残高

在庫管理表には、管理対象を一つとした「単票タイプ」と、複数在庫を一元管理する「在庫移動表タイプ」の2種類があります。単票タイプは、管理が簡単ですが全体像の把握が困難である面がデメリットです。在庫移動表タイプは全体を把握できる反面、担当者や備考欄の入力ができないデメリットがあります。管理したいものによって管理表の種類を使い分ける必要があるでしょう。

在庫管理表を活用すると、保管場所まで探しに行かずに在庫状況の確認をすることができます。他にも、拠点や部署間で共有できる点や、導入コストがかからないこともメリットです。しかし、在庫管理表は手入力の作業となるため、「手間がかかる」「入力ミス」などのデメリットもあります。また、リアルタイムに反映されないことも懸念される点です。

情報の見える化|在庫管理システムの導入

エクセルによる管理のデメリットを解消する方法として、在庫管理に特化した「在庫管理システム」を導入する方法があります。在庫管理システムとは、在庫情報や入出庫情報を一元管理できるシステムで、以下のような機能を備えていることが一般的です。

  • 在庫一覧機能:種類ごと在庫数を確認・管理できる
  • 入出荷管理機能:入出庫の記録ができる
  • 検品管理機能:入出庫する際の数量や品目に相違がないか確認できる
  • 棚卸し機能:棚卸し記録を表示できる

在庫管理システムは、在庫管理の見える化に便利な機能が多く搭載されており、作業の効率化が図れるだけでなく、「人的エラーの削減」「リアルタイム表示」なども実現できます。

また、在庫管理システムと併用して、バーコードやQRコード、RFIDなどを活用すれば、より業務効率の向上につなげることができます。これらは自動認識技術と呼ばれ、専用機器を使って読み取ることで、瞬時に情報を把握・管理できるものです。読み取った情報を在庫管理システムと連携させることで、情報の一元管理や正確性の向上につながります。

在庫管理システムを導入するメリット

在庫管理システムの導入には、以下のメリットが期待できます。

  • 在庫状況のリアルタイム反映
  • 入出庫情報の一元管理
  • 作業方法の標準化
  • 業務遂行の迅速化
  • 人的エラーの軽減
  • 適正在庫の維持・分析から過剰コスト発生の回避
  • キャッシュフローの安定化

在庫情報をシステム上で管理することで、入力の手間が省け、作業方法が標準化できるため、在庫管理業務の負担軽減や業務効率化を図れるでしょう。さらに、人為的ミスの削減にも効果的です。また、適正在庫を維持できることで無駄なコストの発生の防止や人件費カットなど、キャッシュフローの安定化にもつながるでしょう。

導入するシステムを選ぶ際のポイント

システム選定はどう進めればよいのでしょうか。選び方の視点をキッセイコムテックの矢吹が解説します。

ビジネスソリューション事業部
第3システムソリューション部

矢吹 圭介

2011年入社。主に製造業向け業務システムの受託開発に携わり研鑽を積む。生産管理パッケージシステム「ProAxis」製品化プロジェクト発足時からの主要メンバー。
製造業の業務に対する造詣は深く、顧客ニーズを様々な視点から拾い上げ実現することで、製品力の強化に大きな貢献をしている。基幹システムに求められる安定性と時勢に応じたICTを取り入れユーザにとって価値あるソリューションを提供し続けようとする姿は後進の規範にもなっている。
「速さ」、「正確さ」を求めながらも、「柔軟さ」も備えた多才なプレーヤーである。

在庫管理システムを選ぶ際には、自社の用途に適したものを選ぶことがポイントです。まず、「対応している在庫の種類」「管理内容」など、必要な機能が備わっているかどうかチェックします。すでに自社でシステムを持っている場合は、「既存システムと連携が可能か」も忘れず確認したい点です。両者を連携できれば、分析の幅が広がるなど在庫管理システムの導入効果が飛躍的に高まるでしょう。

コストや使いやすさも考慮する必要があります。導入時の価格だけでなく、運用していく上でかかるコストの見積もりをしておくと安心です。システムが複雑すぎて現場の負担が大きくならないよう、操作性の検討も忘れずに行いましょう。

また、製造業において、在庫管理は生産管理業務の一部となります。そのため、在庫管理に特化した在庫管理システムではなく、生産業務全体を一元管理できる「生産管理システム」の導入もおすすめです。生産管理システムは在庫管理だけでなく、販売管理・生産計画・出荷管理・原価管理などさまざまな機能を備えており、生産業務全体を見える化・把握できることにより業務の効率化につなげることができます。

生産管理システム「ProAxis」を活用すれば、在庫管理も円滑化できる

キッセイコムテックが開発・販売している生産管理システム「ProAxis(プロアクシス)」は、受注から出荷・売上管理までの基幹業務を兼ね備えている統合型のシステムです。量産・個別受注生産の両方に対応できるほか、豊富なオプションにより柔軟なカスタマイズも可能です。また、現場が使いやすい操作性を実現しており、システム導入による混乱を最小限に抑え、現場の負担軽減を図る効果も期待できます。

「ProAxis」の活用で、在庫管理状況を見える化することで、販売計画や所要量計算結果と需給予測から問題箇所を確認でき、適正在庫の維持がしやすくなります。また、本システムは、進捗状況や工程ごとの負荷状況も見える化する機能を搭載。情報がリアルタイムに反映されることで早期対応が可能となり、生産計画や人員調整などを考慮した在庫管理が行えます。

「量産」にも「個別受注」にも対応できる生産管理・債権債務管理システム「ProAxis」

自社に合ったシステムを導入し、在庫管理を見える化しよう

在庫状況が誰でもひと目で分かるよう在庫管理の見える化を行うことは、「業務効率の改善」「適正在庫の維持」「保管スペース縮小」「品質維持」「データ活用」といったメリットがあり、スムーズな在庫管理業務の遂行には欠かせません。生産性を向上させるためにも、見える化による徹底した在庫管理が行えるよう、自社に合わせた方法を検討してみてはいかがでしょうか。

MENU
TOPへ