レガシーシステムとは?問題点や脱却方法をわかりやすく解説
過去の技術や仕組みで構築されており、ブラックボックス化したシステムを意味する「レガシーシステム」。レガシーシステムを抱えており、そこから脱却したいと考えている企業も多いでしょう。今回は、レガシーシステムの定義や問題点、脱却方法などを解説します。レガシーシステムから脱却するためのポイントも紹介していますので、参考にしてください。
レガシーシステムとは?
レガシーシステムとは、過去の技術・仕組みを用いて構築されており、実態の把握が困難となっている古いシステムのこと。主に、1980年代に導入されたメインフレームや、それを小型化したオフコンを使ったシステムを指す言葉として、用いられています。ただし、1990年代後半から2000年代に導入されたオープン系システムであっても、最新技術を活用できなかったり、市場の変化に対応できなかったりする場合には、レガシーシステムと呼ばれることがあります。
なお、経済産業省の「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜(サマリー)」では、「老朽化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化したシステム」と定義しています。
レガシーシステムが生まれる要因
レガシーシステムが生まれる要因としては、以下のようなことが挙げられます。
- 古いシステムを刷新したいものの、必要なリソース(人材や予算)を確保できない
- 部門・部署ごとにシステムをカスタマイズすることにより、システムが肥大化・複雑化する
- 担当者の異動や退職などに伴い、システムの全体像を理解している人がいなくなる
- 外部の企業にシステム開発を丸投げした結果、自社のシステムについての理解が浅くなる など
これらの要因はどの企業でも発生しやすいものであるため、レガシーシステムはどの企業にも残存している可能性があるといえます。社内にレガシーシステムに該当するシステムがないかを、確認してみましょう。
レガシーシステムの5つの問題点
レガシーシステムを抱えていると、どのようなリスクが生じるのでしょうか。レガシーシステムの5つの問題点を紹介します。
保守・運用が困難となる
レガシーシステムには、「古い技術が用いられている」「カスタマイズや改修を繰り返し行っている」といった特徴があります。そのため、システムの保守・運用ができるのは、「古い技術に関する知識を有する従業員」や「システムの導入に携わった従業員」などに限られます。その結果、保守や運用の属人化が進み、レガシーシステムは次第にブラックボックス化していきます。
そうした状況において担当者が休職・退職などしてしまうと、システムの全容把握が困難となり、「システムを適切に保守・運用できなくなる」という問題が生じるでしょう。
保守・運用コストがかさむ
保守・運用はできたとしても、システムは長く使えば使うほど、改修が必要になる傾向があります。改修に際しては、システムの改修費のみならず、人件費も必要です。また、外部の企業に開発してもらったシステムをサポート期間終了後も使用したい場合には、延長サポート費用がかかります。
レガシーシステムを抱えていると保守・運用コストがかさむため、企業にとって負担となります。その結果、既存事業の拡充や新規事業の創出などに投資しづらくなることもあるでしょう。
セキュリティーやコンプライアンスの問題につながる
当然ながら、レガシーシステムは使用年数が増えれば増えるほど、システム障害のリスクが高まります。また、最新システムに比べてセキュリティーが脆弱だったり、個人情報保護法などの各種法令に対応していなかったりするものも少なくありません。そのため、機密情報の漏えいといった、セキュリティーやコンプライアンス上の問題が生じる可能性があります。
情報漏えいなどの重大インシデントが発生すると、インシデント対応に時間を割かなくてはならず、通常業務や事業の継続が困難になる可能性があります。加えて、企業に対する信頼・イメージが悪化し、取引中止や業績悪化などを招きます。インシデントの内容・規模や発生後の対応次第によっては、倒産につながることも考えられるでしょう。
最新技術を活用できず、変化への対応が困難になる
レガシーシステムは、古い開発言語を用いて構築されています。そのため、その多くがAIやIoTなどの最新技術に対応していません。
最新技術を事業に活用できないことにより、市場ニーズやビジネスモデルの変化に対応しにくくなります。その結果、最新技術を活用できる同業他社に遅れをとってしまい、企業の競争力が低下し、業績悪化につながるでしょう。
DX推進の障壁となる
レガシーシステムがあると、AIやIoTなどの最新技術に対応できずデータ活用が進まないのみならず、システム同士の連携も困難となります。
また、新システムの導入などによりDXを推進したいと考えた場合には、予算不足という問題が生じる可能性があります。なぜなら、先述のようにレガシーシステムを抱えていると保守・運用コストがかさんでしまうため、DX推進のための予算を十分に確保するのが難しくなるからです。
こうした理由から、レガシーシステムを抱え続けていることは、DX推進の障壁となるといえます。
参考:『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜(サマリー)』|(経済産業省)
課題を解消できないと、「2025年の崖」に直面する
レガシーシステムの課題を解消できなかった場合に直面するのが、「2025年の崖」です。「2025年の崖」とは、レガシーシステムを抱え続けることにより、データ活用ができなかった場合、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があるという課題のこと。レガシーシステムから脱却し、「2025年の崖」を回避できなければ、企業の存続にも悪影響を及ぼすでしょう。
レガシーシステムからの脱却方法
レガシーシステムの脱却方法は、大きく「マイグレーション」と「モダナイゼーション」の2つがあります。それぞれの概要について、見ていきましょう。
既存システムなどを新たな環境に移行する「マイグレーション」
マイグレーション(migration)とは、既存のシステムやソフトウェア、データなどを、新しい環境や別の環境に移行・移転すること。「migration」には、もともと「移行」「移転」などの意味がありますが、IT分野では「既存のシステムやソフトウェアなどの新しい環境への移行」を意味する言葉として用いられています。
マイグレーションに関連して押さえておきたい用語としては、「レガシーマイグレーション」「データマイグレーション」「ライブマイグレーション」などがあります。
マイグレーションに関する用語
- レガシーマイグレーション:レガシーシステムを新システムに置き換えること
- データマイグレーション:異なる環境へデータを移行すること
- サーバーマイグレーション:サーバー自体を、異なるサーバー環境へ移行すること
- ライブマイグレーション:仮想環境にあるマシンを、動作中に別のサーバーに移動すること
この他、既存システムをクラウドに移行することを、「クラウドマイグレーション」と呼びます。
マイグレーションやクラウドマイグレーションについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
【関連記事】マイグレーションとは?工程や成功するためのポイントを解説
【関連記事】クラウドマイグレーションとは?クラウド化する手順やポイントも解説
刷新によりシステムを最適化する「モダナイゼーション」
モダナイゼーション(modernization)とは、刷新によりシステムを最適化すること。「modernization」にはもともと、「近代化」「現代化」などの意味がありますが、IT分野では「既存システムの刷新」を意味する言葉として用いられています。
モダナイゼーションには、「リプレイス」「リライト」「リホスト」などの手法があります。
モダナイゼーションの主な手法
- リプレイス:既存のレガシーシステムを新システムに置き換えること
- リライト:古いプログラミング言語(コード)を新しいコードに書き換えること
- リホスト:既存のレガシーシステムのプログラムを、新たなシステム基盤(機器やOS)に移行すること
モダナイゼーションについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
【関連記事】モダナイゼーションとは?マイグレーションとの違いや成功させるポイントなどを解説
レガシーシステムから脱却するためのポイント
レガシーシステムから脱却したいものの、「リソース(人材や予算)の確保が難しい」「何から手をつけたらよいか、わからない」といった悩みを抱えている担当者もいるでしょう。
そうした悩みを解消し、レガシーシステムからの脱却を図るためには、先ほど紹介した「レガシーシステムの問題点」を会社全体として認識することからはじめる必要があります。その上で、レガシーシステムから脱却するためのベースとなる「業務の見直し」「プラスアルファの効果の周知」「専門家への相談」を進めていくことが、ポイントとなります。
レガシーシステムから脱却するための3つのポイントについて、DX基盤を構築するシステムソリューション「AxisBase」を展開しているキッセイコムテックが解説します。
セミオーダー型のシステム構築によりお客様のDX推進の基盤となる新システムを実現
業務の見直しを行う
現行システムのすべての機能をマイグレーション/モダナイゼーションしようとすると、膨大な手間とコストがかかります。また、場合によっては、時代の変化に即さない業務がそのまま残ってしまう可能性もあります。
時代の変化に柔軟に対応できるよう、レガシーシステムからの脱却に先立ち、業務の見直しをすることが重要です。現行システムでどのような業務を行っているのかを洗い出し、「変えるべき業務」「変えるべきでない業務」を見極めることからはじめることをおすすめします。
業務改革をした上でマイグレーション/モダナイゼーションを実施することにより、「生産性向上」や「DX化」も実現しやすくなるでしょう。
プラスアルファの効果を社内に周知する
レガシーシステムからの脱却プランを社内に伝える際、説明が不十分だと、「費用をかけて新しいシステムに置き換えても、結局何も改善しないのではないか」といった声が挙がる可能性があります。
関係者(従業員や経営者)の理解を得られるよう、プラスアルファの効果を社内に周知することが重要です。具体的な効果についてはシステムによって異なりますが、「データ分析がしやすくなり、予測レポートも作成できる」「システム間の連携がスムーズにでき、業務の大幅な効率化につながる」などが考えられます。
このようにプラスアルファの効果を社内に周知することで、レガシーシステムの脱却に際して必要となるリソース(人材や予算)も確保しやすくなるでしょう。
専門家に相談する
ブラックボックス化してしまっているシステムについては、その全容を把握することからはじめる必要があります。とはいえ、刷新対象となるシステムが多い場合、システムの全容把握に要する人材・時間の確保が困難となるケースも少なくないでしょう。
そうした際におすすめなのが、専門家への相談です。システムの設計・構築に長けた専門家に相談することで、システムの全容把握を一任できます。刷新方法についての具体的な提案のみならず、システム刷新後のアフターフォローにも対応している専門家を選ぶと、レガシーシステムからの脱却後も安心でしょう。
キッセイコムテックでは、「お客様にとって最良なソリューションパートナー」を目指し、ITを活用した課題解決をご支援しています。RFP作成支援から、システム導入・開発、稼働後の保守作業まで対応していますので、「一貫したサービスを受けたい」というニーズがありましたら、ぜひご検討ください。
自社に適したシステムを導入し、レガシーシステムから脱却しよう
レガシーシステムには「業務の属人化」や「保守・運用コストの増大」といった問題点があるため、早急に脱却する必要があります。マイグレーションまたはモダナイゼーションを実施し、レガシーシステムから脱却しましょう。脱却に際しては、「業務の見直し」や「プラスアルファの効果の周知」「専門家への相談」を進めることが重要です。自社に適したシステムの導入によりレガシーシステムから脱却し、DX推進につなげましょう。
DXのさらなる推進のために活用したい「AxisBase」
キッセイコムテックでは、お客様のDX基盤を構築するシステムソリューション「AxisBase」を提供しています。最新IT技術をフル活用した各種テンプレート機能をベースに、お客様のニーズにあった形にカスタマイズして実装が可能です。セミオーダー型のため、システム構築のコストを抑えながらスピーディーなシステム構築を実現できます。
レガシーシステムからの脱却と併せて、「DXをさらに推進していきたい」とお考えの場合には、「AxisBase」の導入をご検討ください。