MES(製造実行システム)とは?11機能と9つのメリットを解説!
生産プロセスの効率化を推進するための要となる「MES」。今回は、MESとはどのようなものかといった基礎的な疑問を解決しながら、MESの導入方式や機能などについても詳しくご紹介します。製造業における導入のメリットについても解説しますので、自社の業務効率化にぜひお役立てください。
MES(製造実行システム)とは?
MESは「エム・イー・エス」や「メス」と読み、Manufacturing Execution Systemの頭文字から作られた略語です。日本語では「製造実行システム」を意味するMESですが、実際にどのようなことができるものなのでしょうか。MESの目的や、他システムとの違いについてご紹介します。
MESでできること・目的
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<MESでできること>
- 製造プロセスの見える化
- 部門間におけるリアルタイムな情報共有
- 品質の監視
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<MESの目的>
- 管理コストの削減
- 迅速な意思決定
- 不良品の削減
MESは、製造プロセスの管理に特化したシステムです。MESを活用することで、製造現場の最新状況が把握でき、部門間や工程間で共有するべき必要な情報を、リアルタイムに取得できる環境が作り出せます。こうして社内の見える化を進めることは、製造プロセスにおけるムダの発生を抑止するのにも有効です。社内リソースの最適な配置にも活用できるシステムと言えるでしょう。
MESと生産管理システムとの違い
生産管理システムが、製品の生産計画から実際に製造するまでの「製造プロセス全体」を管理するシステムなのに対し、MESはこの製造プロセスのうち「製造実行」の部分で活用するシステムです。生産管理の一部分であるとともに、現場の製造体制に直結する「工程管理」に特化したシステムとも言えるでしょう。
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MESとERP(統合基幹業務システム)との違い
製造業では、「何を・どこで・どれくらい」作るのかなどの生産計画を立て、その計画に沿って「どのように」作るかなどのプロセスを指示します。その指示のもと、実際の工場の生産設備は動作し、製品が作られます。
これを「@生産計画」「A製造プロセスの実行」「B製造プロセスの制御」の3つの領域に分けると、MESは「A製造プロセスの実行」の部分を担うシステムです。これに対し、ERP(基幹系システム)は「@生産計画」を担うシステムで、「B製造プロセスの制御」で使われるものには、PLCなどの制御システムがあります。
MESは、ERPで管理する経営計画と、各工場の生産設備や作業員を接続し、連携を強化するためのシステムと捉えるとよいでしょう。
MESが持つ「11機能」とは?
では、MESの具体的な機能にはどのようなものがあるのでしょうか。メサ・インターナショナルが発表した「MESA-11モデル」のなかでは、次の11機能が記載されています。
機能 | 内容 |
1.仕様・文書管理 | 図面や指示書、BOMなど生産に必要な文書を編集・管理する |
2.保守・保全管理 | 設備・工具の保全や、予防保全のスケジュールを作成・実行する |
3.品質管理 | リアルタイムでデータ分析し、品質管理を行う |
4.生産資源の配分・監視 | 装置や工具、資材、人などの生産資源を配分し、管理する |
5.作業のスケジューリング | 生産計画に基づいたスケジュールの作成やシフトの作成・管理を行う |
6.差立て・製造指示 | 最適な作業フローを立案し、作業員へ指示する |
7.作業者管理 | 作業状況の監視や、作業の割り当てを最適化する |
8.データ収集 | 各工程での進捗状況や実績など、生産に関連するデータを収集・分析する |
9.工程管理 | 生産状況を監視し、プロセス制御や、例外状況におけるアラートなどを行う |
10.製品の追跡と体系管理 | 仕掛品の追跡や後工程を管理する |
11.実績分析 | 過去データを参照して生産状況を分析し、レポート作成や進捗管理を行う |
システムの種類によって搭載している機能は異なりますが、MESには主に工程進捗や在庫、設備の保全、製品の品質といった、製造プロセスにおける重要事項を管理する機能が備わっています。
また、管理の対象としては「モノ」「人」「プロセス」の3つに分けられ、表にある機能の1〜4が「モノ」、5〜8が「人」、9〜11が「プロセス」を管理する機能です。導入する際には、どのような機能が必要か見極め、自社の課題にあったものを選ぶとよいでしょう。
(参考:メサ・インターナショナル『メサモデル』)
MESの導入方式|クラウド・オンプレミス
MESの種類は、その導入方式によって大きく「クラウド型」と「オンプレミス型」の2つに分けられます。それぞれの特徴や、利用に適したケースをご紹介します。
クラウド型の特徴
●自社サーバーが不要のクラウド型
クラウド型のMESは、インターネットが使える環境であれば、すぐに利用することができます。自社サーバーやシステム構築が不要のため、比較的短期間で導入まで進めやすいでしょう。ベンダー側でアップデートも行ってくれるため管理工数がかかりにくく、常に最新バージョンを利用できることもメリットです。
●初めてでも導入しやすい費用と機能
一般的に、クラウド型の料金体系は月額などサブスクリプション制で、利用人数に応じて設定されています。そのため小規模組織にとっては、導入・運用にかかるコストを抑えやすい傾向にあります。導入しやすい反面カスタマイズ性は低く、既定プランから選ぶケースが一般的です。セキュリティ対策はベンダー側に依存するため、サービスによっては情報漏洩などのリスクが懸念される場合もあるでしょう。
<クラウド型が適したケース>
導入までスピーディーに進めたいシステムの開発、運用に必要なリソースを自社で確保できないカスタマイズの必要性が低い
オンプレミス型の特徴
●自社に合わせたシステムを構築できるオンプレミス型
1から仕組みを構築するオンプレミス型はカスタマイズ性が高く、自社に最適なシステム構築が可能です。現在利用中の他システムと連携させて効率化することも可能で、導入後も事業展開に合わせて機能を追加しながら柔軟に対応することができます。
●セキュリティ面も自社で対策可能
自社サーバーを利用するオンプレミス型は、セキュリティ対策も自社で決定・実行できます。ただし、MES構築に必要なネットワーク環境やシステムの運用にかかるリソースも必要なため、導入にかかる期間やコストについてあらかじめ検討しておくことが必要です。
<オンプレミス型が適したケース>
自社サーバーを持っている現在利用している他システムと連携させたい自社にあわせて機能をカスタマイズしたい社内情報のセキュリティ対策を強化したい
MESを工場に導入すると得られる効果は?9つのメリット
MESは、進捗や実績、在庫状況など製造プロセスに関する情報を「見える化」する環境を生み出しますが、より具体的なメリットには何があるのでしょうか。
<メリット1>リアルタイムな可視化
前述の通り、MESを導入すれば、各製造ラインの最新状況を見える化することが可能です。MESは、現場の作業員がタブレットで入力した情報や、バーコードなどの自動読み取りによって幅広いデータを収集。各ラインの責任者やさまざまな意思決定を求められる管理層でも、MESを通して現場の状況を把握しやすくなるでしょう。
<メリット2>迅速な対応と改善
常に最新状況が把握しやすくなることで、トラブルがあった場合も迅速に対応できます。アラートなどを参照して、スピード感をもった現場への指示出しを行い、問題による影響が大きくなる前に解決へと導くことが可能です。
<メリット3>生産計画の改善
MESは実績データを蓄積し、自動分析できます。チャート形式での表示やKPIの算出なども容易に行えるため、さまざまな角度から製造プロセスを分析し、改善することができるでしょう。予測分析を活用して見込み需要を予測し、生産スケジュールや生産量を調整することも可能です。
<メリット4>生産効率の向上
製造プロセスに関する情報をMESに集約することで、「どのような工程が効率的か」「どこにどのリソースを配置するとよいか」といったマネジメントの判断がしやすくなります。
リソース配置や工程を最適化し、適切なタイミングで製造指示を出すことで、生産効率の向上へとつなげることができるでしょう。
<メリット5>連携の強化
MESの導入は、製造プロセスに関する情報を一箇所に集約する環境を生み出し、部門間や工程間のスムーズな連携を実現します。社内で共通のシステムを活用することで、各担当者に問い合わせなくても、必要な情報を自分で得ることが可能になるでしょう。
また、仕様変更が生じた場合に発生する部門間の伝達や指示、作業員への展開といったプロセスも効率的に行えます。
<メリット6>在庫管理の最適化
最新の状況を社内で共有できることのメリットとして、在庫管理の最適化が挙げられます。必要な量のみを適切なタイミングで製造することで、在庫過多を防止できるでしょう。また発注もスムーズにできることで、資材不足による製造ラインのストップ防止策にもなり得ます。
<メリット7>品質管理の強化
MESの活用によって、一つひとつの製品を追跡できたり、品質基準や検査基準に満たないものを自動検知できたりするのもメリットです。このような追跡や監視の機能によって、不良品が発生した際も迅速な対応ができ、出荷前に把握することで不良品流出などのリスクを未然に回避できるでしょう。
<メリット8>コスト削減
MESの導入は、原価計算やデータ分析の精度を高め、水面下にあるロスを見える化することができます。正確な数値に基づいた分析が可能となるため、製造プロセスで発生するコスト管理にも効果的なシステムとなるでしょう。
<メリット9>競争力の向上
MESは、社内に効率的な仕組みを生み出し、適切に品質管理を行いながらコスト削減を実現します。受注から納品までスピード感を持って進められるため、競争力の強化にもつながるでしょう。
また、品質・コスト・納期の3つの面から製造プロセスの向上を実現することで、限られたリソースで最大の利益を生み出します。自社に最適なMESを導入することで、多品種少量生産や個別受注など、工数のかかる案件にも対応しやすくなるでしょう。
MES導入のデメリット・課題
MESを導入しても、社内に合理的な仕組みが構築されていなければ、大きな効果は望めません。以下の2つの視点も参考に、導入目的を明確にしておくことがポイントです。
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<MES導入時に明確化しておくポイント>
- どの工程にどのような改善が必要か
- 改善のためにシステムはどのような役割を担うとよいか
このほか、データ入力や閲覧などシステムの操作に関する手間をいかに減らし、使いやすくするかも課題となるでしょう。
また、MESの上位システムであるERPとの連携性も効率化においては重要です。計画の部分を担うERPとスムーズに連動させて、社内全体の効率化を実現しましょう。
MESとの融合を考慮した生産管理システムの導入もおすすめ!
業務効率化やコスト削減を目的にITシステムの活用を検討している場合、生産管理システムの導入もおすすめです。ここからは、より広範囲の業務管理に役立つ生産管理システムについてご紹介します。
生産管理システムとは?
生産管理システムは、生産管理に関連する業務を一括して管理できるシステムです。MESや、その上位システムのERPといった機能が組み込まれており、1つのシステムで生産に関する基幹業務をカバーすることができます。効率化の範囲を広げることで、より大きな改革を社内で進めることも可能でしょう。
生産管理システム「ProAxis」の特徴
キッセイコムテックでは、生産管理システム「ProAxis」を開発・販売しています。ここでは、「ProAxis」の特徴についてご紹介します。
ProAxisについて
生産管理システム「ProAxis」は、製造業の基幹業務に必要な機能を網羅した統合型システムです。中小企業向け生産管理パッケージで、作業や品質検査の実施記録を管理するMESとの融合を視野に入れ、生産計画や製造管理、在庫管理などの効率化・最適化をサポートします。また、ファイルサーバーや文書管理システムに保管されている図面や工程表など生産に必要な情報も、PCやタブレット端末を使って簡単に全社で共有できます。
ProAxisの魅力とは?
「ProAxis」は「繰返し生産」「個別受注」の両方に対応可能で、製品によって生産方法が異なる場合も一つのシステムで対応できる点がメリットです。
現場における使い勝手を重視した「ProAxis」は、マスタがシンプルな構成であることも特徴です。ITシステムに慣れない方でも操作の負担が少なく、システム導入時にネックとなる社員への教育コストやトラブル発生も最小限に抑えられます。
蓄積したノウハウで課題解決!柔軟なシステム構築に対応
製品を手掛けるキッセイコムテックは、精密機械など製造業の盛んな長野県で創業。以来30年以上、さまざまな業種のシステム導入に携わってきました。初めてITシステムを導入する場合も安心して運用できるよう、導入後も手厚いサポート体制を整えています。既存システムとの入れ替えのほか、クラウド環境やハードウェア、セキュリティといった基幹業プラットフォーム全体のご提案もお任せください!
「量産」にも「個別受注」にも対応できる生産管理・債権債務管理システム「ProAxis」
MESの意味や機能への理解を深めて検討を!
製造実行システムを意味するMESは、生産管理における製造プロセスにフォーカスしたITシステムです。人やモノの情報を集約し、効率的に管理するための機能を備えており、リソース配置の最適化などに役立てることができるでしょう。より効率化の範囲を広げたい場合は、MESの機能を備えた生産管理システムの導入も検討してみてはいかがでしょうか。自社に最適なITシステムを活用し、生産性向上を目指しましょう。