債権管理とは?業務フローやシステム活用など効率化を実現する方法

債権管理とは?業務フローやシステム活用など効率化を実現する方法

売掛金や貸付金などの債権を管理することを意味する、債権管理。どの企業にとっても資金繰り悪化を防ぐため重要ですが、特に商品を他社に販売する機会の多い製造業者にとっては不可欠な業務といえます。「会社を立ち上げたばかりで、債権管理方法を一から知りたい」「債権管理業務を効率化したい」という経営者、管理担当者の方も多いでしょう。この記事では、債権管理の業務フローや業務効率化を実現する方法などを解説します。業務効率化のためにシステムを導入するメリットや、システム選定時のポイントも紹介していますので、参考にしてください。

債権管理とは、売掛金や貸付金などの債権を管理すること

債権管理とは、文字通り「債権」を管理すること。具体的には、取引先や顧客に対する「売掛金」や子会社や役員に対する「貸付金」など企業の債権に関する情報を適切に管理し、未回収の債権を防ぐのが目的です。債権管理は、企業規模や業種を問わずどの企業でも発生しますが、特に商品の製品・販売を行う製造業者にとっては不可欠な業務といえます。

債務管理、与信管理との違い

「債権管理」と混同されがちなのが、「債務管理」や「与信管理」です。

債務管理とは、自社が購入した商品・サービスなどの対価についての購入元への支払状況を管理すること。具体的には、「どの企業に、いつまでに対価を支払う必要があるのか」「期限内に支払いができているのか」など、自社の支払い義務を管理します。

定義から明らかなように、債権管理と債務管理はベクトルの違うものです。「取引先や顧客から支払いを受ける権利(=債権)」を管理するのが債権管理、「購入元への支払い義務」を管理するのが債務管理と理解しましょう。

与信管理とは、企業間取引をする上で不可欠な信用(与信)を数値として管理すること。「取引先から債権を回収できない」というリスクを回避することが、与信管理の目的です。具体的には、取引先ごとに信用調査をした上で、売掛金や受取手形など債権の上限額である「与信限度額(与信枠)」を決定します。後ほど詳しく紹介しますが、与信管理は債権管理の工程の一つです。

債権管理の重要性。債権管理を怠るとどうなる?

企業経営は売り上げを出したら終わりではなく、債権を全て回収してこそ健全なものとなります。そのため、債権管理は資金繰りを健全化するためにも重要です

債権管理の目的は、「債権の把握漏れ防止」「期限内での債権回収」「債権の時効消滅の防止」の3つです。

取引の件数が増えるに従い企業が保有する債権も増えるため把握が困難になりますが、債権管理を適切に行えば、債権を漏れなく把握できます。また、債権管理により取引先ごとの債権管理データ(債権残高や支払い期限など)が可視化されるため、期限どおりの債権回収がしやすくなります。期限内に支払いがなされていない「滞留債権」が万が一発生してしまった場合でも、早い段階で相手先に対して支払いを促せるでしょう。債権の時効については、民法で「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」と定められています。時効を迎えると債権回収ができなくなってしまいますが、債権管理を確実に行っていれば、時効による債権消滅を未然に防ぐことが可能です。

一方で、債権管理を怠ると、売り上げを立てるまでに投下した時間やコストなどが全て無駄になってしまう可能性があります。最悪の場合、売り上げがあるにもかかわらず資金繰りが悪化し倒産してしまう「黒字倒産」につながるでしょう。

債権管理の業務フロー

債権管理の基本的な業務フローは、以下の通りです。

それぞれについて、見ていきましょう。

フロー@:相手先が実在しているか、反社ではないかを確認する

債権管理の第一段階として、新たな取引を始める前に、相手先が「実在しているのか」「反社会的勢力(反社)ではないか」を確認する必要があります。

「実在しているかどうか」については相手先の公式HPから確認する他、一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」から商業登記簿の登記情報を確認すると安心です。会社法人等番号や本店所在地、設立年月日、事業目的、資本金額などから、実在性の有無を確認しましょう。

「反社ではないか」は、通常のインターネット検索の他、新聞記事データベースや反社確認専用ツールなど複数の手段を用いて調査することを推奨します。社名や代表者名、ネガティブキーワードなどから検索をかけることで、反社と疑わしいかどうかをある程度判断できます。反社の可能性がある場合、調査会社や興信所、警察などに相談しましょう。

フローA:与信限度額を決める

次に、与信管理を行います。新規の取引相手については、信用調査会社のデータベースや自社での独自調査などに基づき、「取引を進めて問題ない相手かどうか」を判断することから始めましょう。過去に取引したことがある企業の場合、財務状況や過去の支払い履歴をもとに、今回も取引するかどうかを決めます。

その上で、取引先ごとに与信限度額を設定します。売掛金の未回収リスクを最小限にできるよう、「新規の取引先」や「支払い遅延となる可能性がある取引先」については、与信限度額を低めに設定するとよいでしょう。

フローB:取引条件を整理し、書面化する

与信限度額が決まったら、取引条件を整理し、契約を締結します。債権に関するトラブルを未然に防いだり、万が一トラブルが発生した際の法的根拠としたりできるよう、取引条件は契約書や受発注書という形で書面化することが重要です。

なお、契約書や受発注書の書式は法的には定められていませんが、債権管理を円滑に行えるよう、フォーマットを用意しておくことをおすすめします。

フローC:売上計上し、請求書を発行する

債権管理をする際の情報元となるのが、売上計上と請求書発行処理です。契約書に記載した締め日になったタイミングで、売り上げを計上しましょう。それに基づき、取引先に対して請求書を発行します。

なお、支払い期限直前に請求書を送ってしまうと、取引先の決済手続きによっては、期限内の支払いが困難となる可能性があります。売上計上したら、なるべく迅速に請求書を発行しましょう。

フローD:入金消込・仕訳処理を行う

取引先からの入金を確認したら、入金消込をします。入金消込とは、銀行から入手した入金明細と債権管理データを照らし合わせ、入金額に過不足がないかを確認する業務のこと。過不足が見つかった場合には、取引先に連絡してその理由を確認する必要があります。理由が判明したら、どの勘定科目として計上するかを決めます。

入金消込が完了したら、仕訳処理を行います。会計データに反映し、債権残高の情報を更新しましょう。

フローE:顧客別の債権残高を確認する

次に、顧客別の債権残高を確認します。未回収リスクを極力低くするためには、顧客別の債権残高を日々更新し、常に最新の情報を把握できるようにしておくことが重要です。与信限度額を「超えている」または「まもなく超える見込み」であることがわかった場合、「与信限度額の再検討」や「関係部署への注意喚起」などの対策を講じましょう。

フローF:滞留債権が発生した場合、督促などで回収を図る

滞留債権が発生し、取引先からの支払いが滞っていることが発覚した場合、早急に債権回収を図る必要があります。まずは、取引先との話し合いにより、支払いを促しましょう。それでも支払いに応じないようであれば、督促状や内容証明を送付し、支払いを督促します。督促してもなお支払いがなされなければ、「取引条件の見直し」や「法的措置の検討」が必要になります。

債権管理をする上での課題

企業にとって重要な債権管理ですが、以下のような課題を抱えている企業も少なくありません。

  • 管理が煩雑で、業務対応に「時間がかかる」「多くの人件費が必要になる」「ミスが発生する」等の事態が生じやすい。
  • 拠点や部門が複数ある場合、債権に関する情報を会社全体として一元管理するのが難しい。
  • 債権管理業務を担える知識・スキルのある人材の確保に難渋する。 など

こうした課題を解決するためには、債権管理業務の効率化・円滑化を図る必要があります。

債権管理を効率化・円滑化するために必要な対応

債権管理を効率化・円滑化するために企業として必要な対応について、紹介します。

債権管理の担当部門・担当者を決める

債権管理を滞りなく行うためには、専門的な知識・スキルが必要です。債権管理についての知識を組織的に高められるよう、債権管理の担当部門・担当者を決めましょう。

大企業の場合、債権管理の専門部署を設けているところもあります。一方、中小企業の場合には、経理部や総務部、法務部などのスタッフが兼務するのが一般的です。兼務となる場合には、特定の従業員に負担が偏りすぎないよう、メインの業務とのバランスを考慮しながら、任せる業務の範囲を決めるようにしましょう。

債権管理方法を決め、社内規程を策定する

上述の債権管理フローを抜け漏れなく進めるためには、債権管理方法を決めておくことが必要です。具体的には、「債権管理表の記載ルール」や「債権残高確認の頻度」「滞留債権を回収する際の手続き」などを決めましょう。

債権管理方法が決まったら、その内容を社内規程として明文化します。なお、社内規定は法務担当者による草案の作成・確認ののち、取締役会などにおける承認を経て、策定されるのが一般的です。法務担当者は、債権管理の担当部門・担当者と密に連絡を取り、債権管理業務の実態に即した社内規程を策定しましょう。

マニュアル配付や研修実施により、社内に周知する

債権管理を円滑に行うためには、全従業員の理解・協力も必要です。組織全体として債権管理を意識できるよう、債権管理ルールを従業員に周知し、社内に浸透させましょう。

周知方法としては、全従業員を対象とした「マニュアル配付」や「研修の実施」が挙げられます。併せて、債権管理担当者が「社内報」や「社内SNS」などを使って、継続的に周知活動をするのも効果的でしょう。

エクセルなどの表計算ソフトで債権管理表を作成する

債権に関する情報を誰もが一目で把握するために必要となるのが、債権管理表です。債権管理表には、取引先別に、債権の発生日時や支払い期限、債権残高、仕訳項目などを記載します。

エクセルなどの表計算ソフトを使って債権管理表を作成する企業が多いですが、表計算ソフトを用いての管理には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 普段から表計算ソフトを使っているのであれば、特にコストがかからない。
  • 運用開始までにさほど時間がかからない。など

デメリット

  • 運用開始に先立ち、関数を用いたり、マクロを組んだりする必要がある。
  • 数式やマクロに不具合が発生した際、対応できる人が限られることが考えられる。
  • 請求書や滞留債権回収のための督促状は、債権管理表とは別に作成する必要がある。など

債権管理システムを導入する

債権管理システムとは、与信管理や請求書発行、入金消込、債権残高管理などの業務を一括管理できるシステムのこと。債権管理システムを活用すれば、上述したエクセル上での債権管理の課題を解消し、より業務を効率化・円滑化できます。

なお、債権管理システムを活用するメリットについては、このあと紹介します。

債権管理システムを活用するメリット

債権管理システムを活用するメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

  • 与信管理や請求書発行、入金消込、債権残高管理などの業務を一括管理できる。
  • 取引先ごとの債権残高や支払い状況などをリアルタイムで確認できるため、自社の財務状況を明確に把握できる。
  • 債権管理表の作成時間や入金消込業務などにかかる時間を短縮でき、業務が効率化する。
  • 債権回収のための書類を自動作成できるため、滞留債権の回収を円滑に進められる。 など

一方で、導入費用や月々の維持費用などのコストがかかるため、費用対効果を考えた上で、システム導入の要否を検討することが大切です。

導入するシステムを選ぶ際のポイント

導入するシステムを選ぶ際のポイントをキッセイコムテックの中尾が解説します。

ビジネスソリューション事業部
第2営業部 エキスパート

中尾 太郎

2016年入社。20年に渡り、製造業を主要な顧客とし、生産管理パッケージの導入営業を担当しています。幅広いお客様に対応し、多くの経験を積み、製造業における深い専門知識を獲得しました。お客様からの信頼は非常に厚く、それは長いお付き合いと卓越したサービスの証です。
また、自社パッケージの製品戦略やマーケティングにも深く関与し、会社の成功に貢献しています。製品の方向性を見極め、市場の変化に柔軟に対応することで、競争力を維持しています。
今後もお客様と協力し、最適なソリューションを提供し続けます。

導入するシステムを選ぶ際のポイントは、「必要な機能が備わっているか」「利用者にとって使いやすいか」「既に使っているシステムと連携できるか」の3点です。

「必要な機能が備わっているか」については、システムを導入することでどのような課題を解決したいかを明確にすることから始める必要があります。その上で必要となる機能を洗い出し、その機能を有しているシステムを選定しましょう。

「利用者にとって使いやすいか」については、まず「主にそのシステムを使うのが誰なのか」を明確にすることが大切です。その上で、利用者のスキルに合っていて、操作性もよいシステムを選びましょう。

「既に使っているシステムと連携できるか」についても、確認が欠かせません。連携できないものを選んでしまうとデータを入力し直さなくてはならず、かえって業務効率が悪化する可能性があるためです。特に、拠点や部門によって異なるシステムを使っている場合には、「どのシステムと連携可能か」を慎重に確認する必要があるでしょう。

なお、「債権管理」は出荷売上情報といった生産管理に関わる情報と連携して管理することが必要です。そのため製造業の場合には、債権管理に特化したシステムではなく、生産管理のさまざまな工程に対応した「生産管理システム」を導入した方が組織全体での業務改善が期待できるでしょう。

「量産」にも「個別受注」にも対応できる生産管理・債権債務管理システム「ProAxis」

生産管理システム「ProAxis」を活用すれば、債権管理もスムーズに

キッセイコムテックが提供する「ProAxis」は、製造業の現場のニーズを重視した生産管理システムです。「適応性」「操作性」「柔軟性」を考慮したパッケージを特徴としています。

受注生産または見込生産型の「量産」と、一品物を製造する「個別受注生産」の両方に対応しているため「適応性」が高く、さまざまな企業で活用いただけます。また、マスタを極力シンプルに構成したことで、設計変更や日々の追加・修正を簡単に行える「操作性」の高さを実現しました。システムの「柔軟性」が高いため、標準機能では実現できない機能要件も、カスタマイズとアドオン開発により、高いレベルで実現可能です。

また、オプションとして、「債権債務管理」機能を搭載。請求書発行や入金管理、入金消込などの債権管理業務に対応しています。債権管理を含む生産管理全体を円滑化したい方は、生産管理システム「ProAxis」の活用をぜひご検討ください。

システムを活用し、債権管理業務を滞りなく進めよう

債権管理は、資金繰りを健全化するために重要な業務です。債権管理をミスなく進められるよう、「相手先が実在しているか、反社ではないかの確認」から「滞留債権が発生した際の債権回収」まで、紹介したフロー通りに業務を進めましょう。

債権管理を効率化・円滑化するためには、「債権管理の担当部門・担当者を決める」「システムを導入する」といった方法が効果的です。システムを選ぶ際は、「機能」や「使いやすさ」「既存システムとの連携」という視点から、複数のシステムを比較検討することをおすすめします。自社に合ったシステムを活用し、債権管理業務を滞りなく進めましょう。

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