業務効率化を図る具体的アイデア。ツールの種類や生産性アップの工夫
社員の労働力や設備などのリソースを効率よく活用し、よりよい成果を生み出すための「業務効率化」。製造業では、短納期の実現や人手不足への対策においても重要です。業務効率化を進めるには、どのような方法があるのでしょうか。
今回の記事では、業務効率化の考え方やアイデアの具体例をご紹介します。業務効率化に活用できるツールの種類もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
業務効率化とは?
はじめに、業務効率化の具体的な意味や目的について見ていきましょう。
生産性向上のカギとなる業務効率化
業務効率化は、「ムリ・ムダ・ムラ」の3Mを排除することで、人手不足といった課題解決や生産性向上につなげます。生産現場における「ムリ」とは、生産能力に対して目標の生産量が多すぎるなど、負荷がかかりすぎている状態です。このような状態では、作業が停滞しやすく、生産性も落ちやすいでしょう。これに対し、負荷が少なく生産能力が余っている状態を「ムダ」と言います。「ムラ」は、この2つの状態が混在し、安定して生産できていない状態です。
業務効率化は、このような負荷やタイミングのばらつきが均一になるようコントロールしながら「造りすぎ」「工程間の待ち時間」「作業の二度手間」などを解消し、合理化した仕組みによって生産効率を高めます。
製造業では必須!業務効率化が重要な理由
製造業では、人手不足に加えて、従業員の高齢化に伴う技術の継承などの問題が特に深刻化しています。加えて、技術やスキルが身につくまでには、ある程度の期間が必要であり、離職を防いで長く働いてもらえるような労働環境の改善にも課題を抱えています。
人材不足や長時間労働といった課題を解決するためには、製造工程における3Mを減らし、業務効率化を進めて「生産効率を上げる」ことがポイントです。製造業だけでなく、日本全体において生産年齢人口の回復が見込めないなか、業務効率化に向けて早急に動き出すことが重要でしょう。
(内閣府「人口減少と少子高齢化」を加工して作成)
業務効率化を進めるステップ
業務効率化は、手当たり次第に始めても効果が得られるとは限りません。ここでは、業務効率化の効果的な進め方についてご紹介します。
1.課題を洗い出す
課題を洗い出すには、まず「業務内容の棚卸し」が必要です。現場でヒアリングしながら、業務を一つひとつの作業に分解していきましょう。業務工程を分解することで、ムリ・ムダ・ムラがどこに潜んでいるかを可視化できます。フローチャートなどを活用して、業務の流れに沿って図に表すのも効率化のアイデアを考えるために効果的です。
図を作成する際は、関連部門の連絡やデータやりとりについても書き込んでおくのもよいでしょう。
2.改善方法を考え、優先度を決める
現場から挙がってきた課題を整理し、それぞれの改善方法を考えます。改善点が複数ある場合は、計画的に取り組みを進めるため、優先順位をつけておきましょう。「改善すると、どのくらいの範囲によい効果が見込めるか」といったことも考えながら、優先度を考えます。
3.タスクに落とし込み、実行する
業務効率化を実現するまでの「ロードマップ」を作ります。一つひとつの改善策をより具体化し、タスクに落とし込み、実行しましょう。やるべきことに期限をつけておくと、実行の確実性を高められます。
4.効果測定し、改善する
施策を導入した後も、効果を検証しながら業務改善を重ねることが大切です。KPIや改善のフレームワークを活用し、定期的に効果測定や振り返りを行いましょう。ここでは、業務効率化の検証にも使える、生産性を定量的に表す指標を2つご紹介します。
1人当たりの労働生産性
1人当たりの労働生産性=生産量÷労働者数
「1人当たりの労働生産性」は、従業員1人がどのくらいの生産物を作り出したかを測る指標です。工場などでの生産効率の目安にも使われ、1人当たりの労働生産性の数字が大きくなるほど、効率化が実現していることになります。
1時間当たりの労働生産性
1時間当たりの労働生産性=生産量÷(労働者数×労働時間)
「1時間当たりの労働生産性」は、労働時間1時間で生み出す生産量を測る指標です。生産量を増やす、または総労働時間を減らすことで1時間当たりの労働生産性を高めることができます。
【考え方のコツ】業務効率化の方法は大きく3つ
業務効率化に取り組むとき、改善策が思いつかない場合もあるでしょう。ここでは、アイデアを出すときに切り口となる、業務効率化の代表的な方法を3つご紹介します。
現場の環境改善による効率化
製造の現場における業務効率化の方法として、工場や倉庫の環境改善が挙げられます。資材や共有工具の置き場の見直しなどを通して、「どこにあるか探す」「誰が持っているか確認する」といったムダが発生しないような環境づくりに努めます。
<環境の改善例>
- 不要な資材や工具を処分する
- 作業の流れに最適な設備レイアウトを考える
仕組み・プロセス改善による効率化
効率的な仕組みや、ムダの発生を抑えた業務プロセスへと改善することで業務効率化を図る方法もあります。購買や製造など部門間の連携も視野に入れながら「企業全体で見たときに効率的かどうか」をポイントに改善策を考えましょう。
<仕組みの改善例>
- 工程を「まとめる」「分ける」など、業務フローを改善する
- 工程間や時期による負荷の偏りをなくす
IT活用やツール導入による効率化
IT活用や、ツールの導入によって業務効率化を実現するのも一つの方法です。システムによる自動化といったメリットがあるほか、システムやツールの導入によって情報の一元管理など合理的な仕組みを取り入れることも可能でしょう。
<ツールの活用例>
- ツールを活用して、社内の情報共有をスムーズにする
- 製造工程を見える化し、生産管理にかかる工数を減らす
【具体例】製造業における業務効率化のアイデア
業務効率化に取り組んださまざまな事例を参考に、アイデアをまとめました。自社の取り組みの参考にしてください。
現場の環境改善による効率化
効率的に仕事ができるよう、工場内の環境を改善するアイデアをご紹介します。
備品や設備のレイアウト改善
作業効率を考える上で重要となる、備品や設備のレイアウト。「移動距離をなるべく少なくする」「ワンアクションで取り出せる」などのほか、認識しやすさや動線もポイントです。自社の工場で、どのような作業に時間がかかっているか調査し、改善策を考えましょう。
ロボットの活用
人手不足の解消に役立つロボットですが、人が効率的に生産できる工場づくりという観点からもメリットがあります。例えば、部品や製品などを載せて、指定場所まで自動で搬送してくれるAMR(自律走行搬送ロボット)を導入すると、台車を押して倉庫内を移動するといった作業を自動化し業務効率化につながります。このような自動化により、人は加工などのコア業務に集中でき、生産効率の向上が期待できるでしょう。
仕組み・プロセス改善による効率化
業務効率化に向けた、仕組みやプロセス改善のアイデアをご紹介します。
業務の標準化
業務効率化に効果的な方法として、誰でも同じように業務を行える「標準化」が挙げられます。事務処理など作業的な業務だけでなく、専門的な知識や技術が必要な領域でも業務の標準化は一定のレベルで実現することができるでしょう。
例えば、設計部門における業務効率化の対策として「設計書の標準化」も方法の一つです。社内で共有することで、設計部品表を類似品に再利用できるほか、チーム体制の強化、教育期間の短縮化などのメリットがあり、業務効率化にも貢献するでしょう。
業務のアウトソーシング
業務や工程の一部をアウトソーシングすることも、業務効率化のアイデアの一つ。アウトソーシングによって、社内リソースをコア業務に集中させることができます。製造業では、生産工程を海外にアウトソーシングする例も一般的です。
IT活用やツール導入による効率化
ITの活用やツール導入による業務効率化のアイデアをご紹介します。
書類の電子化
アナログの状態からの業務効率化を考えたとき、まず紙で管理している資料をデジタルに変換する方法が挙げられます。例えば、バックオフィスで管理する給与明細や雇用契約書の電子化などです。これによって、印刷や相手に渡す、郵送するといった作業がなくなるため業務効率化につながるほか、コスト削減にも効果的です。
社内情報の一元管理
部門ごとに管理している情報を集約させ、一元管理することで「ファイルを探す」「どこにあるか問い合わせる」といった手間を減らすことができます。社内の共通のプラットフォームとして製品に関するデータを集約することで、進捗状況の把握にも役立ち、見える化の推進にもつながります。
業務マニュアルのオンライン化
ツールを活用して、業務に関するマニュアルをオンライン化することも、業務効率化のアイデアの一つ。QRコードの活用など、現場でマニュアルを利用しやすくする工夫もポイントです。例えば、クラウド上で作成した作業指示書や手順書をQRコード化して該当部品など必要箇所に貼っておけば、従業員がスマホでアクセスして見ることができます。
業務マニュアルのオンライン化によって検索性も向上するほか、変更があった場合の修正も効率的に行えるでしょう。
業務効率化を図るためのツール
業務効率化を進めるために、活用できるツールをご紹介します。
エクセル
<業務効率化の活用例>
- 関数活用による手入力の省略
- マクロの活用による自動化
製造業では、生産や調達の管理にエクセルを使っているケースも一般的です。表計算だけでなく、マクロを使って自動化するなど活用の幅が広いこともメリット。例えば「ワンクリックで領収書を呼び出す」「グラフを自動生成する」といったことも簡単に行え、業務効率化を実現できます。
オンラインストレージサービス
<業務効率化の活用例>
- 社内のデータベースとして活用
- 取引先と共有してデータのやりとりを効率化
オンラインストレージサービスとは、インターネット上にデータを保管できるサービスで、クラウドストレージなどとも呼ばれます。保管場所はURLで共有でき、アクセスを許可されたメンバーは誰でも閲覧や編集ができるため、社内や取引先と共有し、データのやりとりを手間なく行えます。既存データの再利用もしやすくなり、業務効率化に役立てることができるでしょう。
タスク・プロジェクト管理ツール
<業務効率化の活用例>
- プロジェクトの進捗管理の効率化
- 優先順位をつけて効率的に業務を進行
進捗状況の可視化によって、リソースの適正配置や工数管理などマネジメントの効率化を実現できるのが、タスク・プロジェクト管理ツールです。スマホやタブレット、PCなどさまざまなデバイスでアクセスでき、オフィスや工場でも使いやすいツールなど、多様な選択肢があります。進捗状況のほか、各タスクの担当者や締め切り日なども設定でき、タスクごとにチャットでやりとりすることも可能なため、現場間や現場と管理部門間などのコミュニケーションの効率化にも役立つでしょう。一つのタスクを、担当者間でラリーしながら進めていくような業務の管理にも向いています。
IoTシステム
<業務効率化の活用例>
- エラー検知の自動化
- 蓄積データの分析によるムダの洗い出し
さまざまなモノをインターネットにつなぎ、管理を効率化できるIoTシステム。製造業では、装置の遠隔操作や、センサーやカメラを用いたモニタリングなどに利用されています。例えば、温度や動作速度などを監視し、エラーが起きた場合に自動検知するなどの活用方法があるでしょう。蓄積データを分析し、人員の配置や工程の最適化につなげることもできます。
生産管理システム
<業務効率化の活用例>
- 社内情報を一元管理
- データ間の連携によって転記作業を省略
- 予測機能によるムリ・ムダ・ムラの発生を抑制
生産管理システムとは、製造業のあらゆる業務を一括管理するシステムです。横断的なデータ活用によって生産工程の見える化を推進し、社内全体で業務効率化を実現することができます。複数のシステムを利用している場合では、連携ができないとそれぞれのシステム上で入力し直す手間が発生しますが、生産管理システムなら関連するデータ同士で更新を自動反映させることも可能。需要予測などの機能も備えており、生産計画の精度向上にも貢献します。
生産管理システムProAxisの特徴
ここからは、キッセイコムテックが開発・販売している生産管理システム「ProAxis(プロアクシス)」についてご紹介します。
量産と個別受注の両方に対応。現場で使いやすいシステム
現場ニーズを重視し、MRPに基づく受注生産または見込生産型の「量産」と、一品物を製造する「個別受注生産」の両方に対応。複数の生産方式を取り入れている場合も、一つのシステムで対応できます。
使いやすさを考え、マスタはシンプルな構成となっており、現場での設計変更なども簡単です。
柔軟なカスタマイズによって業務効率化をサポート!
標準機能では実現できないご要望には、柔軟なカスタマイズとアドオン開発で対応。創業以来30年以上、さまざまな企業のシステム導入に携わってきたノウハウを活かし、お客様に最適なシステム構築をご提案します。既存システムとの入れ替えなども、ぜひご相談ください。
導入後も継続したサポート体制があるため、安心してお使いいただけることも「ProAxis」のメリット。今後の事業展開に向けたIT基盤づくりならお任せください。
「量産」にも「個別受注」にも対応できる生産管理・債権債務管理システム「ProAxis」
業務効率化に失敗しないためのポイント
業務効率化を進める際は、次のような点に気をつけましょう。
<業務効率化を進める際の注意点>
- コミュニケーションを取りながら段階的に進める
- ケースに応じて効率化の方法を使い分ける
業務内容の急な変更によって、従業員の混乱やトラブルを招くことも考えられます。現場とコミュニケーションを取りながら、段階的に改善を進めることが成功のコツです。現場の声を改善策に反映させることで、従業員のモチベーションも向上し、効率化に向けた意識づくりにも役立つでしょう。
業務の内容によっては自動化するよりも、手動で行った方が工数がかからない場合もあります。ルールや方法を一律化せず、ケースに応じて最適な手段を考えましょう。
業務効率化によって生産性向上を実現しよう
合理的な仕組みへの改善や環境の整備、ITツールやシステムの導入など、さまざまな方法によって実現できる業務効率化。工数が削減できれば、人材の強みを活かしたポジションへの再配置も可能になるなど、新たなビジネスの可能性が広がるでしょう。
業務効率化を進める際は、現場でのヒアリングを重点的に行い、業務内容に応じた改善策を考えることがポイントです。自社に最適な方法で業務効率化を実現し、生産性の向上につなげましょう。