カスタマーサクセスとは?KPIや仕事内容、取り組む際のポイントを解説

カスタマーサクセスとは?KPIや仕事内容、取り組む際のポイントを解説

顧客に能動的に関わることにより、「顧客の成功体験」を支援する取り組みを意味するカスタマーサクセス。ビジネスモデルの変化などに伴い、カスタマーサクセスへの関心が高まっています。「カスタマーサポートとは何が違うのか」「具体的に、どのようなことに取り組めばよいのか」などを知りたい方も多いでしょう。今回は、カスタマーサクセスの定義やKPI、仕事内容、取り組む際のポイントなどをわかりやすく解説します。

カスタマーサクセスとは何か?

カスタマーサクセス(customer success)とは、直訳すると「顧客の成功」ですが、ビジネスにおいては顧客に能動的に関わり「顧客の成功体験」を支援する取り組みのことを意味します。なお、企業によっては、商品・サービスを購入した顧客をサポートし、成功へと導く役割を担う職種を「カスタマーサクセス」と呼ぶこともあります。

(※本記事では、「顧客の成功体験」を支援する取り組みを、カスタマーサクセスとして紹介していきます。)

顧客の成功体験とは

「顧客の成功体験とは、どういうことなのか」をイメージしにくい方もいるでしょう。明確な定義は決まっていないものの、顧客の成功体験とは「顧客が望んでいる結果」とほぼ同義と考えられます。

例えば、「給与担当者の業務効率化による、企業の生産性向上」を望む顧客が、給与計算システムを導入したとしましょう。その場合、単にシステムを導入しただけでは成功体験とはいえません。「システムを活用することで、給与計算などにかかる時間が大幅に短縮し、部門全体の残業時間を15%削減できた」「システム導入によって給与計算ミスが減り、営業部門の従業員に迷惑をかけることがなくなった(コア業務に注力できるようになった)」といった成果が出てはじめて、成功体験といえます。

カスタマーサポートとの違い

カスタマーサクセスと混同されがちなのが、「カスタマーサポート」です。カスタマーサポートとは、顧客からの問い合わせ・質問に対応する業務のこと。どちらも「顧客のための取り組み」ではありますが、その目的や取り組む姿勢などが異なります。

カスタマーサクセス カスタマーサポート
目的 顧客に成功体験をもたらすこと 顧客の不満・疑問を解決すること
取り組む姿勢 能動的
(顧客からの問い合わせなどを待たずに、積極的に顧客にアプローチ)
受動的
(顧客からの問い合わせなどがあってはじめて、対応を開始)
主なKPI ・LTV
・チャーンレート
・アップセル率、クロスセル率
・NPS®

※詳細はのちほど紹介
・一次応答時間
・解決率
・応答件数
・顧客満足度 など

カスタマーサクセスの目的は「顧客に成功体験をもたらすこと」ですが、カスタマーサポートでは「顧客の不満・疑問を解決すること」を目的としています。また、取り組む姿勢については、カスタマーサクセスは「能動的」、カスタマーサポートは「受動的」という違いがあります。目的や取り組む姿勢が異なるため、KPIも違います。

カスタマーサポートは、「不満・疑問がある」というマイナスの状態から「不満・疑問がない」というゼロの状態にするための取り組みともいえます。一方、カスタマーサクセスは、「不満・疑問がない」というゼロの状態から「望んだ結果が出ている」というプラスの状態にするための取り組みといえるでしょう。

カスタマーサクセスと「The Model」の関係性

カスタマーサクセスについての理解を深めるために押さえておきたいのが、「The Model」との関係性です。「The Model」とは、営業プロセスについてのフレームワークのこと。営業効率を上げることを目的に、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つに分けています。

概要を簡単に紹介すると、「マーケティング」により獲得したリード(見込み客)に対してアプローチし、購買意欲を高めて案件化するのが「インサイドセールス」。それを受け、商談などを行って契約・受注につなげるのが「フィールドセールス」で、受注後の顧客に能動的に関わっていくのが「カスタマーサクセス」です。

すなわち、マーケティングやインサイドセールスなどとは求められる役割や業務内容は異なるものの、カスタマーサクセスは広い意味では「営業活動の一つ」といえます。会社の利益を上げるために重要な業務の一つがカスタマーサクセスであると理解するとよいでしょう。

カスタマーサクセスが注目されている背景

カスタマーサクセスが注目されている背景には、「ビジネスモデルの変化」とそれに伴う「営業スタイル」の変化があります。

従来のビジネスモデルは、顧客の受注を一番の目的とする「売り切り型」が一般的でした。しかし近年、製品・サービスを「必要な期間だけ」利用するために顧客が料金を支払う「サブスクリプション型ビジネス」が台頭してきています。代表例としては、BtoBでは「SaaS(software as a service)」、BtoCでは「Netflix」や「Amazon Prime」などがあります。こうしたサブスクリプション型ビジネスは、顧客にとっては「契約のハードルが低く、解約のハードルも低い」のが特徴です。顧客が商品・サービスそのものやアフターフォローなどに不満を感じた時点で解約となり、競合他社に顧客を奪われることも珍しくありません。

また、サブスクリプション型ビジネスの台頭に伴い、営業スタイルにも変化が生じています。従来は、顧客に商品・サービスを「売ったら終わり」という営業スタイルで、受注は「ゴール」でした。しかし、サブスクリプション型ビジネスが浸透している近年では、「できるだけ長い期間、利用し続けてもらう」ことを目的とした営業スタイルに変化し、受注は「スタート」へと変わっています

自社の商品・サービスを長期間、利用を継続してもらうためには、顧客にとって「なくてはならないもの」にすることが必要です。カスタマーサクセスを通じて顧客に成功体験をもたらすことができれば、自社の商品・サービスは顧客にとって「なくてはならないもの」となります

こうした理由から、カスタマーサクセスへの関心が高まっているのです。

カスタマーサクセスを導入するメリット

カスタマーサクセスを導入することにより、以下のメリットが期待できます。

  • CX(顧客体験)の向上に直結する
  • LTV(ライフタイムバリュー)を最大化できる
  • 商品やサービスの改善・開発がしやすくなる

それぞれについて、見ていきましょう。

CX(顧客体験)の向上に直結する

CXとは、顧客が製品やサービスを認知・購入・利用したり、アフターフォローを受けたりした際の体験”や“経験”に伴って感じる価値のこと。カスタマーサクセスは、主に商品・サービスを「購入後」の顧客に対する支援であるため、カスタマーサクセスがうまくいけば「アフターフォロー」で顧客が感じる価値が高まります。そのため、カスタマーサクセスは、CXの向上に直結するといえます。

CXの向上により、企業に対する信頼・愛着の度合いである「顧客ロイヤルティ」の向上や商品・サービスの継続率の向上(解約率の低下)、他社との差別化などの効果も期待できるでしょう。

【関連記事】CX(顧客体験)とは?向上させるメリットや方法などをわかりやく解説

LTV(ライフタイムバリュー)を最大化できる

LTV(Life Time Value)とは、顧客生涯価値のこと。顧客が自社との取引(購入・契約)を開始してから終了するまでの期間に、どれだけの利益を企業にもたらすかを表す指標です。

LTVは、顧客が長期間継続して商品・サービスを利用したり、上位ランクの商品・サービスに乗り換えたり、もともと使っていた商品・サービスに加えて別の商品・サービスも契約したりすることにより、向上します。カスタマーサクセスがうまくいけば、顧客のこうした行動が促されるため、LTVを最大化できるでしょう。

商品やサービスの改善・開発がしやすくなる

カスタマーサクセスの実践により、顧客と関わる機会が増えることで、自ずと顧客のニーズも汲み取りやすくなります。「顧客が何を望んでいるのか」が明確になるため、商品やサービスの改善・開発がしやすくなるでしょう。その結果、新規顧客の獲得や既存顧客のさらなるLTV向上も期待できます。

覚えておきたい、カスタマーサクセスのKPI

先ほど紹介した「LTV」の他に、カスタマーサクセスで重要となってくるKPIは、「チャーンレート(解約率)」「アップセル率・クロスセル率」「NPS®(Net Promoter Score®)」の3つです。

チャーンレート(解約率)

チャーンレート(解約率)とは、一定期間内に解約した顧客の割合を示す指標のこと。企業にとって、チャーンレートは低ければ低いほど良いです。

チャーンレートは、以下の計算式で求められます。

チャーンレート=一定期間に解約した顧客数÷期間開始当初の顧客数×100

例として、当初の総顧客数が3,000人、期間中に解約した顧客が60人の場合、チャーンレートは「60÷3000×100」で「2%」となります。

アップセル率・クロスセル率

アップセル率とは、上位ランクの商品・サービスに乗り換えた割合のこと。クロスセル率とは、もともと使っていた商品・サービスに加え、別の商品・サービスにも契約した割合のことを指します。いずれも、企業にとっては高ければ高いほど良いです。

アップセル率とクロスセル率は、以下の計算式で求められます。

アップセル率=アップセルした顧客数÷総顧客数(顧客の延べ数)×100

クロスセル率=クロスセルした顧客数÷総顧客数(顧客の延べ数)×100

例として、総顧客数が5,000人、アップセルした顧客数が500人、クロスセルした顧客数が250人の場合、アップセル率は「500÷5,000×100」で「10%」、クロスセル率は「250÷5,000×100」で「5%」となります。

NPS®(Net Promoter Score®)

NPS®とは、自社の商品・サービスに対する顧客の「信頼」「愛着の度合い」を評価する指標のこと。企業にとって、NPS®は高ければ高いほど良いです。

NPS®を測るためには、顧客に対して、「この商品・サービスを知人に勧める可能性はどの程度ありますか?」といった質問をし、0から10の11段階で回答してもらう必要があります。その上で、顧客を「批判者(0〜6と回答した顧客)」「中立者(7〜8と回答した顧客)」「推奨者(9〜10と回答した顧客)」に分けます。

回答結果に基づき、以下の計算式でNPS®を求めます。

NPS®=(推奨者数−批判者数)÷(回答者総数)×100

例として、回答者1,000人中、推奨者が500人、批判者が300人の場合、NPS®は「(500−300)÷1,000×100」で「20」となります。

(注:NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです)

カスタマーサクセスでは何をする?主な仕事内容

カスタマーサクセスでは、具体的にどのようなことをするのでしょうか。主な仕事内容を紹介します。

導入支援・活用支援の実施

カスタマーサクセスの主な仕事内容とされているのが、導入支援・活用支援です。

導入支援は「オンボーディング」とも呼ばれます。導入支援では、利用開始時点で顧客がつまずくことがないよう、「初期設定の完了や基本操作の習得に向けたサポート」「教育用コンテンツの提供」などを行います。

導入からある程度の期間が経過した顧客に対しては、さらなる活用に向け、活用支援を実施します。具体的には、「おすすめの機能・活用方法に関するウェビナーの開催」「顧客が抱える課題の解決につながるアップセル・クロスセルの提案」などをする必要があります。

顧客同士のコミュニティの運営

顧客同士のコミュニティの運営も、カスタマーサクセスの重要な施策の一つです。顧客同士のコミュニティがあることで、以下に示すようなさまざまなメリットが期待できます。

顧客同士のコミュニティがあることによるメリット

  • 「同じ商品・サービスを使う者同士」という仲間意識が生まれ、解約防止につながる
  • おすすめの機能や活用方法などを顧客同士が共有し合うことにより、商品・サービスの活用が促される
  • 顧客同士で質問・回答をし合うことにより、顧客対応業務の負担軽減につながる
  • 新商品・サービスの開発に向けたヒントを得られる可能性がある など

なお、顧客同士のコミュニティを有していない場合は、「どのような方法(SNS、対面など)でコミュニケーションをとれるようにするか」「コミュニティの利用に関して、どのようなルールを設けるか」などの検討から始めるとよいでしょう。

活用状況の確認とフォロー

顧客が「どのくらい商品・サービスを活用しているのか」「利用継続の意思があるのか」などを把握し、必要なフォローを行っていくことも、カスタマーサクセスでは重要です。

活用状況については、顧客が商品・サービスの利用を継続するかどうかを数値化した「ヘルススコア」を定期的に確認するとよいでしょう。ヘルススコアは、「サービスへのログイン回数」や「商品・サービスの利用時間」「定期開催しているウェビナーへの参加有無」「顧客アンケートの回答内容」などから測定できます。

ヘルススコアが低い顧客に向けては、原因を分析した上で、解約防止のためのアプローチをします。例として、「サービスの特徴を把握しきれていない」ことが原因で利用頻度が少ない顧客に対しては、「困りごとがないかを聞く」「顧客の抱える課題解決につながる機能を紹介する」などが有効でしょう。

加えて、更新時期が近い顧客に対して、「更新方法をわかりやすく伝える」「アップセルやクロスセルの提案をする」といったフォロー・アプローチをすることも大切です。

カスタマーサクセスを進める上でのポイント

カスタマーサクセスでは、どのようなことを意識する必要があるのでしょうか。カスタマーサクセスを進める上でのポイントを紹介します。

「顧客の成功体験とは何か」を明確に定義する

カスタマーサクセスを進める上でまず重要となるのが、「顧客の成功体験とは何か」を明確に定義することです。「顧客が成功している状態とは、具体的にどのような状態なのか」は提供する商品・サービスによって変わってくるため、自社の顧客がどういう状態を望んでいるのかを定めておきましょう。

組織全体として取り組むことを意識する

先ほど「The Model」との関係で紹介したように、カスタマーサクセスは営業プロセスの一つです。そのため、カスタマーサクセスの効果を高めるためには、「マーケティング」や「インサイドセールス」「フィールドセールス」を担う部署との連携が不可欠といえます。場合によっては、開発・製造部門や経営陣の協力が必要となるケースもあるでしょう。

こうした理由から、組織全体として取り組むものであると意識することがとても重要です。具体的には、「カスタマーサクセスの目的や重要性を社内に周知する」「日頃から他部門のメンバーと情報を共有し合い、認識を揃えておく」などするとよいでしょう。

データを最大限活用できるよう、ツールやシステムを導入する

「顧客の成功体験」の実現を促すためには、顧客に関するデータを収集・分析し、顧客の抱える課題やニーズに対する理解を深めることが重要です。それにより、カスタマーサクセスの方針や具体的な施策を考えやすくなるでしょう。

顧客の人数が少ない場合や関連部門が少ない場合には、エクセルなどの表計算ソフトで顧客データを管理することができます。しかし、顧客が増えたり、関連部署が多かったりすると、表計算ソフトだけでは管理が難しくなることが想定されます。そうした状況下で、データの利活用を最大化するためにおすすめしたいのが、顧客管理システムをはじめとするツールやシステムの導入です。ツールやシステムを活用することで、収集したデータに基づく、カスタマーサクセスの実践が可能となるでしょう。

顧客に応じて、必要な対応を行う

顧客データや顧客からのヒアリング内容などをもとに、それぞれの顧客に合った対応をすることも重要です。とはいえ、顧客一人ひとりへの対応を一から考え実行するのは現実的ではないため、顧客をいくつかの階層に分け、階層ごとにカスタマーサクセスの施策を変えていくことをおすすめします。

顧客の階層は、「タッチモデル」というモデルに基づき、「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つに分けるのが一般的です。「ハイタッチ」はLTVが大きい顧客を、「テックタッチ」はLTVが小さい顧客を、「ロータッチ」はハイタッチとテックタッチの中間層の顧客を指します。

顧客が「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」のどこに属するかで、顧客の望む支援の形も変わってきます。例えば、「ハイタッチ」の顧客にはマンツーマンでのフォローが、「ロータッチ」の顧客にはワークショップやセミナーのような集団的な支援が有効だとされています。一方、「テックタッチ」の顧客には、説明動画やチャットボットなどの提供で事足りるでしょう。

カスタマーサクセスで用いるツール・システムの選び方とおすすめのシステム

カスタマーサクセスのためにツールやシステムを活用したい場合、どのような点を意識して選ぶとよいのでしょうか。ツール・システムの選び方とおすすめのシステムを、キッセイコムテックの山田高志が解説します。

ツール・システムの選び方

ツールやシステムを選ぶ際のポイントは、「セキュリティー」や「操作性」「他のツール・システムとの連携」「費用対効果」などです。

企業によって、「何を最重要視すべきか」が変わってくるため、まずは優先順位を考えることからはじめましょう。その上で、優先順位に基づき、導入候補となるツール・システムをいくつか選びます。

サービス提供会社のHP掲載情報や問い合わせによって得た情報などを参考に複数のツール・システムを比較検討し、自社に最も適したものを導入するとよいでしょう。無料お試し期間のあるツール・システムの場合、試しに使ってみて、使いやすさを確認した上で正式導入することをおすすめします。

カスタマーサクセスに適した「AxisBase」

AxisBase」はキッセイコムテックが提供する、セミオーダー型のシステム構築サービスです。テンプレート機能を活用することにより、フルオーダー型に比べ、「高品質」「低コスト」「短納期」でシステムを構築できます。また、データ活用を促進するデータ検索・出力・連携機能の他、製品IoT機能にも対応可能。顧客ごとの情報を分析し、より効果的なアプローチ方法を検証・実行できるため、カスタマーサクセスの実施にも適したサービスです。

「カスタマーサクセスのためにシステムを活用したい」というニーズがありましたら、AxisBaseの導入をご検討ください。

セミオーダー型のシステム構築によりお客様のDX推進の基盤となる新システムを実現

カスタマーサクセスにより、企業の成長につなげよう

カスタマーサクセスの重要なKPIは、LTVやチャーンレート、アップセル率・クロスセル率、NPS®です。

カスタマーサクセスの担当部門・担当者は、「導入支援・活用支援」や「顧客同士のコミュニティの運営」「活用状況の確認とフォロー」をする必要があります。また、カスタマーサクセスを進める際は、「組織全体として取り組むことを意識する」「データを最大限活用できるよう、ツールやシステムを導入する」といったことがポイントとなります。

カスタマーサクセスにより、CXの向上やLTVの最大化などを実現し、企業の成長につなげましょう。

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